目次
はじめに
本年度(2022年度)、60代で東京女子医科大学医学部医学科に正規合格された方に、約1時間インタビューさせていただきました。
私立医学部は、特に年齢によって”差別”されることがあると言われます。しかし、年齢”だけ”で判断されることはなく、筆記試験やそれまでのキャリアから総合的に判断されることがわかる事例です。
ご本人様からは「(私が合格したことで)皆さんを力づけてほしい」と、インタビューの公開をご快諾いただきました。
参考になれば幸いです。
インタビュー
※松濤舎でインタビューしたものをテキスト化し、ご本人様に確認いただいた上で掲載しています。
修士課程修了後、外資系の製薬会社で研究職として働く
北陸地方の国公立大学薬学部を卒業したあと、修士課程まで修了しました。その後、製薬会社の研究職に就職。当時は、女性の修士は就職に不利で、内資系企業は学士卒しか採用してくれなかった時代です。そのため外資系製薬会社に研究職として就職しました。それから25年間、創薬の研究をしていました。
あるとき、自分の研究をしていた抗がん剤が臨床試験に進むことになりました。臨床試験で医師と仕事をする過程で自分も医師になりたいと思ったことが、医学部受験を始めることにしたきっかけです。
神奈川の予備校で2年間勉強
通っていた予備校は、8時半〜夜10時まで開いていました。そのため、月〜土の9時〜21時まで行き、12時間×6日勉強していました。外に食べに行くと時間がかかるので、お弁当を2つ持って行き、ご飯の時間以外は勉強に充てています。主婦なので、家に帰ったあとは家事をしていました。
数学と化学はすっかり忘れていたため、塾では個人授業も受講。パックで受講すると安くなるようだったので、得意だった英語・生物を含む全科目を受講しました。1コマ=2時間授業で、数学4コマ、英語2コマ、化学1コマ、生物1コマでした。ちなみに、最初から国公立は諦め、私立に絞って勉強していました。
もともと1年計画だったのですが、1年目はどこも1次試験すら通らず、迷った末に2年目も継続。2年目は、4つの医学部で1次合格しましたが、3つの大学は不合格。女子医だけ正規合格しました。
受験開始時の成績
河合塾の全統記述模試の偏差値で、英語58、数学45、生物55、化学45でした。
最終的な成績
英語と生物は70くらい、数学と化学は60ちょっとでした。
外資系だったので英語は大丈夫で、生物系の仕事をしていたので生物も得意でした。化学は、有機化学は大丈夫だったのですが、理論化学・無機化学が苦手でした。数学も苦手でした。
使用していた問題集
英語:過去問を含むさまざまな教材
数学:1年目は黄色チャート、2年目で青チャート
化学:セミナー化学
生物:セミナー生物
英語は得意だったが苦労した
外資系企業に務めていて日頃から英語は話せていましたし、論文も日々読んでいたのですが、大学受験は別物でした。英語は話せても英文法は全然違います。正直、文法はわからなくても喋れるのにな、と思いながら勉強していました。
他科目も含めて全体的に、受験は受験として、受験に特化した対策をしないといけないなと思いました。
あと、英語は模試と各大学の個別試験の内容は違うなと思ったので、模試よりも過去問をやったほうがいいと思います。最後の半年は毎日1年分、受けそうな大学の過去問をやっていました。
それでも、単語帳は毎日30分、文法も毎日30分やっていました。そのあと過去問をやり・・・という感じです。医学的な内容の問題が出題されたときはラッキーと思っていましたが、帝京や東医ではテーマが哲学だったりしましたし、やはり文法が細かいところは実務と違っていて苦労しました。
英語はとにかく毎日やっていました。
数学は定着と応用に時間がかかった
数学は、理解はできるのですが、解こうとすると解き方を忘れてしまっていることが続きました。あとは、応用が効かないことがよくありました。ちょっと違う問題が出ると対応できないといった感じです。
毎日数学の問題を一定量を解くようになってから解けるようになりました。とにかく反復するしかないんだなと、このとき思いました。
1年目は本当に、勉強の仕方すらわからなかったです。最終的に、青チャートはコンパスマーク3個くらいまでは解けるようになっていました。
化学は無機の暗記、理論の理解に時間がかかった
化学は無機の暗記が苦手でした。1年目はちっとも覚えられませんでした。2年目はゴロ合わせも含めてなんとか覚えることができました。通学時間も活用してテスト形式で覚えていました。理論化学も理解するのが大変でしたが、2年目に理論化学の問題を週2回くらい解いていて、何回も繰り返してやっと解けるようになりました。
数学と同じく、理論化学の事象の理解はできたのですが、問題として出題されたときに解き方が出てこない、答えられないという感じでした。問題を解く練習をしないといけないんだなと思いました。
生物は実験問題が得意で、暗記は暗記でしなければならなかった
生物は暗記しなければどうしようもない科目でした。授業で使った問題集(セミナー生物)は3回はやりました。出来なかった問題には印をつけて、それができるようになるまで何回もやっています。最近の生物の問題は、問題文が長くて知識がなくても解ける問題や実験問題が多くなってきていて、それは仕事柄、得意でした。高校生だとそういった実験問題に苦手意識があるかもしれません。
ちなみに、生物の教科書は本当にちゃんとしてると思いました。生物はどんどん新しいことがわかってきているわけですが、それが教科書に反映されていて。新しいことを論文を読んで学んでいましたが、ちゃんと教科書に反映されていたことに感動しました。
面接は厳しい内容だった
女子医は面接時間が長かったです。この年で始められてどうするか、など厳しいことも聞かれました。もちろん、なぜ医師になりたいのかなど普通のことも聞かれました。
なお、女子医は、女性医師として途中で辞めずに頑張って欲しい、といったことを入学後に言われることが多いです。また、グローバルで活躍してほしいというメッセージも多いです。これまで育児をしながら勉強したり、外資で働いていたこともあり、そういった経験をかっていただいたのかもしれません。他の大学でも厳しい質問は結構されましたが、その中でも女子医だけには価値を認めてもらえたのだと思います。
最後に
私も2年間、本当に不安で、やりたいからやってるはずなのに、何のためにやってるんだろう、本当に合格するのだろうかと思うことがありました。先例も少なかったので、このインタビューを通し、力づけられる方がいらっしゃると嬉しいです。
松濤舎からのコメント
非常に明るく、知的で、エネルギーに満ち溢れた方でした。人生100年時代、学習者の多様化が進む中でこのような合格事例は増えてくると思います。
勉強方法に関していえば、やはり問題集を繰り返し、解くことを通して定着させるという勉強法に行き着いています。英語も、やるべき市販教材が終われば志望校の過去問に入り、出題傾向に特化した勉強をしていくのが効率的です。
それでも2年間、毎週70時間以上を勉強しての合格でした。医学部受験は相変わらずハードルが高いですが、当たり前を徹底していけば必ず合格が見えてくるという好例と思います。
以上、参考になれば幸いです。