合格最低点を超える知識量があれば合格する
「合格最低点を超える知識量があれば合格する」
これが、受験勉強におけるもっとも重要な原理です。知識に目を向け、知識を身につけると割り切ることから始めましょう。
松濤舎では、暗記指導をもっとも重要な指導に位置づけています。
1. 有意味暗記をさせる指導
入試本番の時点で必要な知識を持っているためには、長期記憶しなければなりません。
「記憶力がない」と言っている人は、単に正しい暗記方法を知らないだけです。正しい暗記方法は、魔法のような方法ではありませんが、エビデンスに基づき、指導実績もある方法です。
もっとも重要なのが有意味暗記です。
理解の伴う情報として記憶しなければならないということです。まずは有意味暗記しようとすることを最優先で行ってください。
有意味暗記の対義語は、丸暗記・機械暗記です。意味のないアルファベットの文字列はまったく覚えられませんが、意味のわかる言葉はずっと覚えておけるのと同じです。
松濤舎では、理解しながら勉強していけるよう全教科で辞書代わりとなる参考書を指定し、わからないことがない状態で進められるようにしています。
有意味暗記のための方略1:精緻化
有意味暗記する方法は大きく2つあります。
1つは精緻化です。
精緻化とは、すでに知っている知識(=既有知識)に、新しい知識を紐付けて覚えることです。自分の知っているものに喩えたり、ストーリーで覚えたり、図解を見たり、ゴロで覚えたりするのが精緻化方略の例です。
一方、何度も反復することをリハーサルというのですが、リハーサルは長期記憶する方法としてはほとんど有効ではないことが科学的にわかっています。
繰り返し書いて「手で覚える」などと言っている人は、まさにこのリハーサルというものをやってしまっており、ものすごく効率の悪い方法で記憶してしまっています。
松濤舎では、精緻化による暗記指導をしています。また、面談時には解答を写すといった頭の動かさない作業をしていないか、すべての時間・すべての勉強が長期暗記に寄与するようになっているか確認し、単位時間あたりの習得知識量を最大化する指導を行っています。
有意味暗記のための方略2:体制化
有意味暗記するもう1つの方法は、体制化です。
順番に並べたり、箇条書きしたり、情報の因果関係や親子関係を整理して覚えることが、これに当たります。
整理せずにタンスに仕舞った服は探せませんが、きちんと整理していればすぐに検索して取り出すことができるのと同じことが記憶にも言えるということです。
正しい記憶観を持つ
長期記憶の容量には制限がないと言われています。
多くの人は、記憶容量はコップのようになっており、一定以上情報を入れると”溢れて”しまい、どんどん忘れていっていくイメージを持っています。
確かに、短期記憶…正確には作業記憶(ワーキングメモリ)という情報を処理するために一時的に保存しておく場所には容量に限りがあるので、情報を入れても数秒でどんどん忘れていってしまいます。
しかし、長期記憶には容量がありません。新しい知識をどんどん長期保存しておけるのです。長期記憶に情報を保存するためには、一時的に作業記憶に保存された情報を、長期記憶に移動させる必要があるのですが、移動させるには精緻化や体制化を行えばよいのです。
長期記憶は、コップではなく、樹状をイメージしてください。知っている知識が幹で、そこに新しい知識をどんどん紐付けていくイメージです。
こうして新たに取り入れた知識が既有知識となり、さらにそこに新しい知識を紐付けていけるようになる…という感じで、どんどん知識体系ができていくのです。
2. 分散学習させる指導
どうしても丸暗記しなければならないものもあります。例えば、英単語。
こういった単純暗記せざるを得ないものは、分散学習するようにしてください。時間間隔をより長く置いた方が、より長く覚えておけることが知られているので、敢えて放置したほうが長期記憶できるのです。
間隔を置けば当然忘れてしまうのですが、忘れてから思い出した方が定着することが知られています。
これは直感に反していますが、科学的なエビデンスがあります。普通は「一度忘れてしまったらゼロに戻るから、忘れる前に復習して記憶を維持したほうがいい」と思いがちなのですが、実は「一度忘れてから再度覚え直したほうが長期記憶に寄与する」のです。
一度できた問題はなるべく放置すべき
覚えていることを復習する時間は長期記憶に寄与しないばかりか、新しい知識を学ぶ時間にもなっていないので壮大な無駄であるいうことです。
問題集には◯×マークをつけ、◯マークのついている問題は模試前の復習まで放置するようにしてください。
ちなみに、直感的に正しいと思う勉強法の多くが間違えていることも、科学的にわかっています。そのため「東大生の勉強法」などの勉強法本が市販されていますが、学習科学の本を何冊か読んでから見てみると、残念ながらその多くが非効率であることがわかります。彼らが東大に合格しているのは、効率の悪さを時間と努力でカバーしているのが実態です。
松濤舎では、問題集は最低でも3日間隔を置いて復習するよう指導しています。面談時に問題集を確認し、◯×マークがついているか、きちんと間隔を置いて復習しているかも厳しくチェックしています。
3. 負荷を高める指導
時間間隔を置いた復習は、負荷を高めた学習の一種とも言えます。
負荷を高めたほうが長期記憶しやすくなりますし、知識を転移(応用)しやすくなることも知られています。
時間を置いて復習する、ランダムに並べて復習する、類題を解くなどが、負荷を高めた勉強になります。
松濤舎では、指定問題集のラインナップが負荷を高める仕様になっています。
負荷を高める問題集ラインナップ
例えば、英単語は『システム英単語』『単語王』のカードを使用します。単語帳では順番で覚えてしまうので、シャッフルしてヒントなしで答えられるか確認してもらいます。カードにすることで覚えていない単語だけを集めて勉強ができるので効率が大幅にアップします。
ちなみに、「英単語は文中で覚えたほうがいい」というのはエビデンスがなく、却って文脈依存して覚えてしまう弊害があることも科学的な実験で知られています。
数学は『Focus Gold』で網羅系問題集をやったあとに、『新数学 スタンダード演習』や『数学3 スタンダード演習』で、各問題のヒントなしに入試レベルの問題を解きます。『Focus Gold』に載っている問題の類題ではありますが、重要な問題のみを扱っているので理解の確認になります。
理科は、『エクセル』シリーズを解いたあとに『良問問題集』で入試レベルの類題を解き、負荷をかけて問題演習することで転移しやすくしています。
知識量は裏切らない。努力を無駄にしない指導を
合格可能性は知識量で決まる、正しい暗記方法が重要、と言われたとき、どう感じたでしょうか? 暗記は嫌だなと思ったかもしれません。
しかし、知識量は裏切りません。知識は身につけた分だけ、確実に点数に反映されるようになります。知識量は、努力と正しい勉強法でいくらでも増やせます。
「無意識にやりがちな勉強を、意識レベルに落とし込み、意図を持って勉強しようとする」。これが知識量に目を向けた学習であり、受験勉強において重要なスキル・姿勢・学習観なのです。
知識量を可視化する「進捗管理シート」については、下記記事を参照ください。