過去問までの流れ
受験生の4月に志望校の過去問を確認する
受験生の4月になったら志望校の過去問を確認しましょう。未習範囲も多く、学力的に解けるレベルになっていない人も多いはずです。それでも出題形式や難易度、配点や合格最低点を把握することで残り1年間の学習効率が大幅に上がります。例えば、自由英作文がなければ対策不要ですし、発音・アクセントがあれば対策しなければなりません。こういったことを掴んでおきましょう。
東進の過去問データベースは使い勝手がいい
過去問演習というと赤本や青本を購入すると思いますが、東進の過去問データベースに登録しておくと楽です。志望校が決められないとき、様々な大学の過去問をパッと見ることができ、比較もしやすいです。
過去問に入るタイミング
偏差値がボーダーを超えたら過去問に入る
すべて既習範囲になったあと受験した模試で、ボーダー偏差値を超えたら過去問演習に入ります。
そのため、もっとも早く入れるのが英語です。英語の場合、文法を習い終わったら過去問演習に入ってもよいので、高2中に過去問に入ることもあります。英語は出題形式によってやるべき勉強が大きく異なるので、早めに過去問演習に入るのがもっとも効率的です。
数学も高2中に終わる学校がありますので、ボーダー偏差値を超えたら過去問演習に入ります。
こうして高1,2は英数中心で進め、過去問演習に早く入るのが定石です。その間、理科や社会などの他教科を進めていくのが効率的なのです。
私立の過去問から入る
国公立大学の場合は共通テストの結果次第で出願校が変わりますが、私立大学はある程度出願校が決まっていることが多いです。典型問題集が終わったら、応用問題集に入ってもいいですが、どのみちやらないといけない私立の過去問演習に入るとよいでしょう。それを踏まえて問題集の復習をしたり、弱い分野だけ応用問題集を部分的に勉強できて効率的です。
①過去問演習前に確認すること
合格最低点
過去問を解く前に、必ず合格最低点を確認しましょう。合格最低点が公表されていない場合は、合格者平均点から、だいたいの目安となる点数を予想するようにしてください。
合格最低点 × 1.1 = 合格者平均
と考えて結構です。
頻出分野、出題傾向
大学によっては頻出分野や傾向が偏っていることが多いです。
例えば、毎年確率と積分は出ている、とか、図形・空間系の出題が多い(複素数平面、図形と方程式、空間ベクトル、積分を使った体積問題)など、偏りが見られるケースが多いです。
解答時間、時間配分
解答時間と時間配分も予め決めておきましょう。ネットで検索すると合格者の意見が出てくることがあるので、参考にしてみるといいです。
②試験時間を1.5倍にして解く
過去問はまず、試験時間を1.5倍にして解いてください。そして合格最低点に届くかどうか確認します。
制限時間を1.5倍にしても合格最低点に届かないのであれば、原因は解答スピードではなく、知識量です。もし合格最低点に届いたら、知識量は不足していないため、あとは制限時間内に合格最低点を取るためのパフォーマンスを向上させるだけとなります。
はじめから制限時間内で解くと、知識不足なのか演習不足なのか、問題の切り分けができません。多くの人は、最低点が出ないと演習量不足だったり、過去問に慣れていないといって、さらに演習を追加してしまいがちです。しかし、たいていの人は知識量の不足が原因で過去問が解けていません。
過去問演習は知識を増やすことにはほとんど寄与しません。解説は淡白で、抽象化も学習者に任されます。
知識が足りないのか、パフォーマンスが低いのか、原因を切り分けるためにも、必ず解答時間を1.5倍にすることからはじめましょう。
時間をかけても解けないこと、がわかる
制限時間を1.5倍に延ばすことの効用は、時間をかけても解けない問題があること、それがどれくらいのレベルなのかが掴めることにあります。制限時間内で解くと、だいたい「もっと時間があればもっと解けた」と思いがちです。その結果、本当は時間をかけても解けないレベルの問題で粘ってみたりして、結局点数に結びつかなかった、というミスをしがちです。
制限時間を1.5倍に延ばして解いてみることで、時間がたっぷりあっても解けない問題があること、志望校の場合はそれがどれくらいのレベルの問題なのかが、掴めるようになります。
本番、「どうせこのレベルの問題は時間をかけても解けなかった。だから躊躇なく捨てよう」と思えるかどうかは、合否を分ける非常に重要な境目となります。
③制限時間で解いてみる
試験時間を1.5倍に延ばして合格最低点が出たら、あとは制限時間内に解く練習をするだけです。その際、下記について絶対に守って過去問を解くようにしてください。
- 最初の1分で全体を見通す
- 例年と傾向が変わっていないか確認する
- 解くべき問題を決める(取るべき得点率を踏まえて)
- 時間配分を決める
- 解く順番を決める
- 解ける問題を優先し、解けないと思ったらすぐに飛ばす
- 大問ごとの時間配分を守る
- 随時ケアレスミスをチェックする(最後にまとめての見直しは絶対にダメ)
過去問より難しい問題を解く必要はない
例えば、過去問に登場する数学の問題のうち、合格最低点を上回るのに必要な問題(だいたい全体の7割ほど)が、『Focus Gold』の例題・練習に紐付くなら、『Focus Gold』の例題・練習より難しい問題を解く必要はありません。
過去問より難しいレベルの問題を解くことは害にもなります。解かなくても良い問題(≒捨て問)にも手を出してしまい、時間をロスしてしまうからです。必要十分なレベルの問題しか解かなければ「自分に難しすぎると思うから、これは捨て問だ」と自信を持って判断することができます。
難しい問題集をやるほど頭が良くなりそう、などといった間違った考えは、すぐに捨て去ってください。
過去問レベル以上の問題を解くのではなく、過去問レベルの難易度の問題を網羅的に解くほうが合格可能性に直結します。あらかじめやっておいた類題が本番に出題される可能性が高まりますし、類題でなくても当該分野の穴を埋めることができます。深めるより面を広げるイメージです。
入試本番では、かけた時間だけ得点に反映される状態が理想です。点数につながらないことに時間をかけることは、もっとも避けなければなりません。
過去問はやるほどいいわけではない
多くの年度をやるほど過去問の成績が伸びるように錯覚している人がいますが、間違った考えです。
過去問をやることによって”本番力”や”対応力”といった漠然とした力を身につけることが過去問演習の目的だと思いがちですが、漠然とした”◯◯力”に頼り、無自覚な大量の演習を行うことは超非効率なので絶対にやめましょう。
本記事にあるように、過去問演習の位置づけや役割、過去問演習を通して得るべき知識といったものを認識し、意識的に学習するようにしましょう。
過去問演習のやるべき年数
制限時間内に合格最低点が取れるまで何年分もやってください。
知識量が十分ない人は(試験時間の1.5倍をかけても点が取れない人は)、過去問演習をやっても意味がないので、問題演習に時間をかけましょう。
過去問が最高の教材、は嘘
「過去問が最高の教材であり、簡単な問題集を終わらせたら過去問演習に入るべき」という意見を聞きますが、周りの東大生、医学部生で、そのような方法で勉強していた人はいません。
過去問の重要度が問題集より低い理由は、主に2つあります。
抽象化・体系化が学習者に任されるから
過去問集には「この問題はこう解く」という解説は載っていますが、「この手の問題はこう解く」というコンテンツが載っていません。
つまり、1つの問題から本質を見抜き、抽象化し、転移できる知識にまで昇華するのは、個々人に任されているのです。これでは学習効率が低いです。
そもそも過去問には「応用性の高い学びが得られる問題だけ」が載っているわけではありません。悪問も奇問も含みます。
一方、問題集には、応用性が高く、学びが多い問題だけが選定されて載っています。
問題集を十分にやらず早めに過去問演習をやってしまうと早々に成績が頭打ちになってしまうので注意しましょう。
全ての問題が解ける必要はないから
合格最低点は6−7割であるので本番ではその6−7割が解けたら良いにも関わらず、どれが解けるべき問題で、どれが解けなくても良い問題なのかがわからないのが、過去問の致命的な点です。
本番で解かなくても良い問題に時間を使うのは、学習効率が低すぎます。
それに、ほとんどの大学で小問レベルの配点は公表されていないため、実際にどれくらいの点数が取れているかを把握するのが困難です。
傾向は変わる可能性がある
出題傾向を調べても裏切られる可能性は十分にあります。
特に私立大学では出題傾向が大きく変わることがあります。分野に絞って対策するのはリスクが高いので、絶対に避けましょう。
不確実性を減らすためには、出題傾向を掴むのではなく、過去問の「レベル」を把握するようにしてください。そして、過去問のレベル以上の問題・問題集には手を出さないようにしましょう。
過去問演習に過度な期待は持たず、必要十分なレベルの知識量を増やすことに最大限時間をかけることをオススメします。