「有名中高一貫校しか難関大に合格できない」は妄想
入塾面談をしていると、保護者様から「有名な中高一貫校に通っていなければ医学部に合格するのは難しいのでしょうか?」といったご質問をされることが結構あります。
これに対しては明確に「NO」とお伝えしています。なぜなら、これが事実だからです。
私自身、地方の公立進学校出身です。毎年20名前後の医学部合格者、15人ほどの現役東大・京大合格者を出す高校でした。また、松濤舎には地方進学校生が多く、医学部をはじめとした難関大に多数入っている実績からも有名な中高一貫校に入らないといけないということはありません。
逆に、地方の公立進学校から学ぶことは多いです。
高校から本格的に勉強を始める地方公立進学校生が、3年間という限られた期間で都内中高一貫校生と同等に戦える人がいるのはなぜでしょうか?
これを知ることができれば、都内中高一貫校生は最強だとも言えます。
結論:「やるべきことは有限」という学習観
私が常に持っていた学習観は「やるべきことは有限」というもので、実際、地方進学校生で難関大に合格している人の多くがこの学習観を持っています。
例えば、公立高校や国公立大学の入試問題は教科書の範囲内からしか出題されません。学習指導要領から外れた試験は文科省の決まりにより作れなくなっているからです。もちろん、公立中高の定期テストも教科書の範囲内からしか出題されません。
そのため、常に教科書準拠問題集や学校の先生のプリントを徹底していればよかったのです。
実際、中学時代は(必要な知識量が少なかったので)定期テスト2週間前から教科書準拠問題週を徹底していれば県内の統一模試でほぼ満点が取れ、高校時代は定期テスト2~3週間前から典型問題集や学校のプリントを徹底し、それ以外の期間は既習範囲を同問題集で定着させていく、といった勉強をするだけで問題ありませんでした。
イメージとしては、「宝の埋まっている範囲が明確で、そこだけ徹底的に掘り起こせばいい状態」と言えます。
中学受験をして中高一貫校に入ることのメリットは多大です。進路が速いこと、情報がたくさんあること、優秀な友人が周りに多いことなど、私も東大時代に同期を羨ましく思ったものです。しかし、東大に入っているような人たちは正しく考えられた人たちであって、上手くいかなかった人たちも多いのが現実です。
そういう人たちは、「やるべきことは有限」という”収束方向の”受験観を持っておらず、逆に「優秀な人はできるだけたくさん(何かを)やったほうがいい」「塾で与えられたことをどんどんこなしていくことがいい」といった”発散方向の”受験観を持っています。
やるべきことが有限だと気づいた中高一貫校生は強い
私の友人や、東大・京大のサポートスタッフの多くが都内中高一貫出身ですが、彼らはみな戦略的思考に長けており、ゴールから逆算して無駄なく勉強してきた人ばかりです(本当に無駄を嫌う人が多いです)もとの地頭が良い上に、学校の進度は速いので十分な勉強時間を確保して知識の定着もできます。
そのため、中高一貫校生で「やるべきことは有限で、これを徹底したらいい」と気づけた人は最強です。あとはやるだけの状態だからです。
タイルを敷き詰めるような勉強を
地方の公立進学校で上位にいるような人たちは「やるべきことが有限」という学習観を持っているので、手にする教材はいずれも徹底的にやり込んでいます。それ以上やる必要がないという信念を持っているので、打ち手としては当然の帰結です。
私はこれを「タイルを敷き詰めるような勉強」と呼んでいます。
このような感覚は全員が当たり前のように持っていると思っていたのですが、入塾面談で「難しい問題集にもどんどん手を付けて模試の成績もよかったのに合格出来ていない人」を深堀りしてみると、問題集を”解き散らかして”きていて、きっちりと勉強してきた感覚を持っていなかったりします。
長期記憶しやすく応用もしやすい知識は体系立った知識である、ということが科学的にわかっています。「タイルを敷き詰めるような勉強」で、きっちり勉強してきたという自信と、体系的な知識を習得していってください。
最後に
「出題範囲は有限である」という確信は、目の前の勉強を迷いなく進めるためだけでなく、入試本番でも「あの中に載っていた知識からしか出題されない」という姿勢で問題に取り組むことができます。解くべき問題に取り組み、捨てるべき問題は素早く捨てられるようになります。
身につけるべき必要十分な知識を習得するためにも、本番のパフォーマンスを最大化するためにも、「出題範囲は有限である」という学習観を持って勉強していってください。