速報:2024年度共通テストについて
得点調整はなさそうです。
はじめに
第3回大学入学共通テストの「理科②」で得点調整が実施されました。
「生物−物理」の間の平均点に20点以上の差が生じたからです。
では、得点調整とは一体どのようなものなのでしょうか? どんなときに得点調整が行われ、得点調整の有無によって有利・不利はあるのでしょうか?
また、過去に得点調整が行われたときは、どのような対応だったのでしょうか?
共通テストの得点調整とは?
まず、大学入試センターは得点調整について次のように発表しています(読まなくて大丈夫です)
後述の通り、要点は4つあります。
⑴ 大学入試センターは,令和 3 年 1 月 16 日(土)及び 17 日(日)に実施する試験並びに令和 3年 1 月 30 日(土)及び 31 日(日)に実施する試験それぞれにおいて,次の各科目間で,原則として,20点以上の平均点差が生じ,これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には,得点調整を行う。
ただし,受験者数が 1 万人未満であった科目は得点調整の対象としない。
① 地理歴史の「世界史 B」,「日本史 B」,「地理 B」の間
② 公民の「現代社会」,「倫理」,「政治・経済」の間
③ 理科のグループ②の「物理」,「化学」,「生物」,「地学」の間
また,得点調整の実施の有無は,令和 3 年 1 月 16 日(土)及び 17 日(日)に実施する試験については令和 3 年 1 月 22 日(金)(予定)に,令和 3 年 1 月 30 日(土)及び 31 日(日)に実施する試験については令和 3 年 2 月 4 日(木)(予定)にそれぞれ発表する。
⑵ 令和 3 年 1 月 16 日(土)及び 17 日(日)に実施する試験と令和 3 年 1 月 30 日(土)及び 31日(日)に実施する試験の間では,得点の調整は行わない。
引用元:『令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項』
1. 共通テストの得点調整は、【特定の科目間のみ】が対象
下記①〜③内でのみ得点調整が行われ、科目を超えた得点調整は行われません。
① 地理歴史の「世界史 B」,「日本史 B」,「地理 B」の間
② 公民の「現代社会」,「倫理」,「政治・経済」の間
③ 理科のグループ②の「物理」,「化学」,「生物」,「地学」の間
今回、第一回共通テストでは「生物−化学」、「倫理−政治経済」で平均点の差があることが論点で、得点調整されるとしたら理科②内、公民内でのみ行われ、地歴の得点は変わりません。もちろん、国語・数学・英語の点数も変わりません。
2. 平均点差が【20点以上】あり、さらにそれが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合、共通テストの得点調整は行われる
得点調整は平均点差が20点以上あれば機械的に実施されるものではありません。点差が「試験問題の難易差に基づくものと認められる場合」のみ行われます。
ただし、どのような基準を満たしたら「試験問題の難易差に基づくものと認められる場合」に該当するかは定かではありません。蓋し、”総合的に考えて”実施有無の決定がなされると思われます。
平成9年の数学で約22点、理科で約19点の平均点差が生じ、社会的な批判を浴びました。そこで、科目間に“20点程度”の平均点差が生じた場合には、得点調整を行わないことが“社会的に許容され難い”と考え、20点差以上において得点調整を行うことに。
大学入試センターはこれを踏まえ、平成9年5月に得点調整検討委員会を設置し、選択科目間における平均点差等の基本的な考え方などを提言しました。当提言が、その後のセンター試験(共通テスト)の得点調整の基本的な考え方、実施方法として、現在まで引き継がれています。
参照:センター試験の「得点調整」!(旺文社)
3. 別日程の共通テスト間での得点調整は行われない
共通テストの別日程間での得点調整は行われません。
なお、もともと追試験では得点調整は行われないことになっています。
4. 受験者数が1万人未満の科目は得点調整の対象外
受験者数が1万人未満の科目は得点調整の対象外となります。
例えば、地学も生物との平均点差が20点以上になりだったとしても、地学は受験者が例年2,000人前後のため、得点調整の対象外科目となります。
共通テストの得点調整の特徴は?
以下の5つのポイントを押さえておきましょう。
1. 【対象科目すべて】の点数が調整される
例えば、「生物−物理」間の平均点差を調整するための得点調整が行われる場合、同じ「理科②」グループで、受験者数が1万人以上いる「物理」「化学」も得点調整されます。
2. 素点から調整点への変換によって、【素点が下がることはない】
受験生にとって一番気になるのが「点数は上がるのか?下がるのか?」だと思いますが、幸いなことに、点数が下がることはありません。上がることはあっても下がることはないので安心してください。
3. 点数調整後も、【平均点は15点差】を残す
得点調整はされるものの、「生物」と「物理」の平均点差は大きく縮まることはなく、約15点差になるよう調整されるに留まります。よって、今回は物理選択者が有利だったという事実に変わりはありません。
平成27年は「物理Ⅰ69.93点」「生物48.39点」で得点調整が行われました。当然ですが、必ずしも特定の科目選択者が有利なわけではありません。
4. 調整点の平均点の順序は、【素点の平均点の順序を保つ】
例えば、「生物−物理」間の平均点差が21点、「生物−化学」間の平均点差が18点だった場合、得点調整によって「生物−物理」間の平均点差が15点になるが「生物−化学」間の平均点差は18点のまま、ということはありません。平均点の順序は保たれたまま得点調整が行われます。
5. 【素点の範囲内】で調整は行われる(0点は0点のまま、満点は満点のまま)
0点の人が得点調整によって5点になったり、100点の人が105点になったりすることはありません。0点は0点のまま、満点は満点のままとなり、その間の点数が調整されます。
過去に2度行われた得点調整について
では、実際に得点調整が行われたらどのようになるのでしょうか? 過去に2度行われたセンター試験の得点調整を元にシミュレートしてみましょう。
1回目の得点調整(平成元年)
念のため記載しておくと、平成元年に行われたセンター試験では、化学(73.75点)と生物(44.31点)の平均点の間に29.44と30点近い点差が生じました。当時、これらの受験者が共通に受験した理科Iにおける各受験集団の平均点をこれらの集団の理科の学力と考え、その高低パターンを反映するように物理受験者と生物受験者の目標平均点が定められ、それを元に得点調整が行われました。
2回目の得点調整(平成27年)
現行と同じ方針の元で行われた平成27年の得点調整では、下記のような「換算表」が公表されました。
得点調整表の見方(具体例)
例えば「生物の素点が70点」だった人は、
- 行(素点):70
- 列(科目):生物
を見ると「生物の調整点は77点」となることがわかります。このように、換算表から簡単に得点調整後の点数がわかるようになっています。
この換算表からもわかるように、該当科目はすべてにおいて得点調整が入ることがわかりますね。
共通テストの得点調整の実施有無はいつ発表されるか?
第3共通テストでは、下記日程で発表されました。
令和4年1月20日(金)
換算表の作成ロジックは?
「分位点差縮小法」を元に調整点が算出されます。
分位点差縮小法を一言で説明すると「最高平均点科目の得点の累積分布を目標分布とし、調整すべき科目の得点の累積分布を目標分布の方向へ移動させる方法」となります。
ただ、これではよくわからないですよね。
知っておくべきは「可能な限り公平性(公平感)を保ちながら行われる得点調整」であるということです。
もちろん、得点調整において“万人が納得する方法”を見出すことは不可能です。分位点差縮小法も、高得点の受験者群には新たな不公平感が生じる措置でもありますし、モデルとしていくつか弱い点があることもわかっています。
しかし、短期間に調整作業が可能で、十分に公平感が感じられる処置として採用された方法です。また、いずれにせよ令和3年に得点調整が行われるとしたらこの方法となります。今後別のモデルが採用されることがあるかもしれませんが。
分位点差縮小法について詳しく知りたい方は、下記『大学入試センター試験における選択科目観の得点調整について』もご覧ください。
最後に
得点調整が行われるかどうかは、受験生にとってアンコントローラブルです。やれることは個別試験に向けて勉強することだけですので、得点調整に関する疑問が解消したら、再び個別試験に向けて勉強するようにしましょう。