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【決定版】定番問題集を盲目的に使う問題点

受験生時代に使っていた問題集たち(一部)

私は受験生時代、数学は『青チャート』(数研出版)を使っていました。数学の学校の先生から「これ1冊極めたら東大でもどこでも行ける」と言われたからです。実際、『青チャート』をメインにやり込んだ結果、東大2次でも問題なく得点できるようになりました。

大学生時代に個人的に家庭教師を頼まれたときも『青チャート』を推奨していました。自分が使ったことがある問題集以外には知らなかったので、自分が使っていた問題集を何の迷いもなく指定していたのです。

しかし、参考書を執筆するようになってから参考書や問題集を研究するようになったり、出版社の編集者さんと議論をしたりするようになってから、もっと良い問題集があることに気づきました。

それが『Focus Gold』(新興出版社啓林館)です。

人はどうしても、自分が使っていたものが最も良いものだと考えがちです。しかし、ゼロベースでフラットに判断した場合にはそうではないことを、私は身をもって痛感しています。

広く検討し、本当に良いものを薦めなければなりません。

決して悪いわけではないが、上位互換の問題集がベター

『青チャート』は決して悪い問題集ではありませんし、学校指定問題集が『青チャート』の場合はそれで指導しています。しかし、選べるのであれば『Focus Gold』を推奨しています。『Focus Gold』の特徴と良い点については下記を参考にしてください。

教科書傍用問題集は『エクセル』シリーズ

また、私は高校時代、化学と生物はともに『セミナー』(第一学習社)を学校で配られていました。他に色々な問題集を追加してやっていましたが、土台はセミナーをおかげでつきました。『セミナー』や『リードα』(数研出版)、『センサー』(啓林館)は教科書傍用問題集に分類されるのですが、いずれもやりこむと実力がつきます。

ですが、教材研究を進めたところ『エクセル』(実教出版)が都内の中高一貫進学校で採用されているということを知りました。手にとってみたところ、他書と比べて問題数が多く、解説もわかりやすかったのです。

理科は典型問題を事前に解けるようになっておくことがポイントなので、もっとも網羅性の高い『エクセル』をやるべきなのです。

学校営業が強い出版社の教材が採用されやすい

学校で『重要問題集』(数研出版)が配られていましたが、当時から使っていませんでした。

なぜなら、問題の選びが別に良いものだと思わなかったこと、解説も特にわかりやすいものではなかったからです。

他の問題集を使って理解が進んだ経験をして化学はすでに得意になっていたため、余計に良い問題集と思うことはできませんでした。

実際、最難関大学合格者にヒアリングしても、特段良かったという話は聞きません。「重要問題集を1冊やれば…」という話を見受けますが、他の基礎系問題集は絶対にやっていますし、情報を鵜呑みにし、基礎がない状態で重要問題集をやって上滑りをしている人の方が圧倒的に多い事実にも目を向けましょう。

さて、教科書傍用問題集より上のレベルの問題集で良いものはなかなかありませんでしたが、最近では『良問問題集』(旺文社)が、多くの入試レベルの問題を扱い、丁寧に解説してくれるので、理解しながら入試レベルまで実力を上げることができます。

こういった発売されて間もない問題集は口コミが広がるのに時間がかかりますが、既存の問題集に対して上位互換であるとわかっている問題集を敢えて使わないなど考えられません。

なお、『重要問題集』や『数1A2B スタンダード演習』(数研出版)、『数3 オリジナルスタンダード』(数研出版)といった、解説が丁寧ではなく特に良問とは言えない難問が掲載された問題集が学校で採択されているのは、ひとえに数研出版の営業力があってこそだと思っています。数研出版の方には申し訳ないのですが…。


少し数研出版さんのフォローをしますと、下記の参考書は松濤舎で使用を推奨している数研出版の参考書です。どちらもとても良い参考書ですので指定参考書で使っています。
『チャート式 新生物(生物基礎・生物)』

定番問題集の上位互換が存在する必然的な理由

出版社は、よく売れている問題集があればそれにあてた問題集を作ります。営利企業なので当然のことです。

売れている問題集にも欠点はありますので、それを補い、時代のニーズに合わせて作れば、良いものは作れます。

そのため、新刊に上位互換の問題集があるのは当然なのです。探していないか、判断できないか、口コミが広がる途中であるかの、いずれかの状態になっているだけです。

受験生は、すべてを見て判断しているわけではない

受験生は、すべての問題集を見て判断しているわけではありませんし、何が良いのかを判断できない人も多いでしょう。

「他に良いものがあるかもしれないが、自分が使っていて特に問題なかったもの」を後輩に薦め、その後輩もまた他書と比較することのないまま後輩に薦め…といったループになっています。

「参考書は定番商品が一番売れる」とは、すべての書店員さんが言うことです。

「なぜいいか? 他ではダメなのか?」に答えられる人はほとんどいないはずです。問題集を常にチェックし、すべてを見比べてフラットに評価し、実際に指導の現場で使ってみなければ、わからないことだらけなのです。

受験教材は保守的な評価を受ける

そもそも受験は「失敗できない」ので、保守的にならざるを得ません。よって、新刊の問題集に手を出すよりも、昔からある定番問題集を使おうとする気持ちはよくわかりますし、それで大筋は間違えていません。

特に保守的になりがちなのが、長文読解系の問題集です。

結局、どうしたら長文読解の点数が上がるのかわからないのです。感覚的にわからないから、どの問題集をやったらいいかわからず、使ってみた本人も良かったのかどうかわからないまま「私はこれをやりました」という口コミだけは広まり、評判が評判を呼ぶ状態を作ります。

例えば『やっておきたい英語長文』(河合出版)はずっと売れていますが、含まれているコンテンツは正直、長文問題集であればどれにでも載っているものだけです。それなのにずっと売れ続けています。限られた時間の中で『やっておきたい英語長文』でなければならない必然性を、科学的なエビデンスと実際の指導経験をもとに説明できる人は、ほとんどいないはずです。

当然、私が受験生時代にはなかった問題集ですので、既刊問題集をフラットに評価した結果であることはおわかりいただけると思います。逆に、本書がずっとこの後も「一番お薦めする問題集」であり続けるとは限りませんし、もっと良い問題集が出たらそちらを推奨していくことになります。

最難関大学合格者は、定番商品を盲目的に使っていない

「よく知られた問題集を使わないのはなぜですか?」と聞かれることがあります。それはシンプルで、難関大学合格者はもともと、定番商品を盲目的に使っていないからです。

松濤舎では、最難関大学合格者と同様、各教科で身につけるべきこと、各教科の勘所、それを身につけるのにもっとも適した問題集の特徴は何かを踏まえ、問題集を選定しています。