
共通テスト英語はどんな試験か?
共通テストの「外国語」科目における英語は、「リーディング」と「リスニング」の2つの試験で構成されています。それぞれ独立した試験として実施されます。なお、外部検定のようなライティングやスピーキングの試験はありません。
共通テスト英語の配点
配点は、リーディングとリスニングがそれぞれ100点満点です。
多くの大学ではこのまま1:1の比率で合否判定に利用しますが、大学によってはリーディング:リスニング=3:1など独自の比率に換算する場合があります。年度によって変わることもあるので、志望校の最新の募集要項を確認する必要があります。
ただし、後述しますが、リーディングとリスニングは同じくらいの点数に持っていくことができるので、比率関係なくリスニングの点数を上げていくことが重要であり本質です。
共通テスト英語の試験時間
試験時間はリーディングが80分、リスニングが約60分(うち解答時間は30分)です。
後述しますが、リーディングの時間は非常にタイトです。短い時間で処理していく難しさがリーディングにはあります。
リスニングの約60分は非常に長く感じるはずです。第一日程の最後の科目ということもあり、疲れている中で集中して最後まで聴ける実力が求められます。こちらについても詳しくは後述します。
共通テスト英語の構成
リーディングは全問が長文問題になっているのが特徴です。
大問数は変動がありますが、2025年度は大問8つの構成となっていました。各大問の出題形式やテーマにも変動がありますが、二次試験の英語でよく出題される評論文ではなく、ブログ記事、広告、レポートの草案、プレゼンテーション資料など、日常生活や学術的な場面で実際に使用されるような実用的な英文(authentic material)の出題が中心となっています。
これからも、大問数や文章量のボリューム、長文問題の題材や出題形式は毎年変動がある可能性が高いです。当日に臨機応変に対応できるようにしておく必要があると心得ましょう。
リスニングは第1回共通テストから大問は6つです。発話・対話・ディスカッションについて、長いものや短いものを聴き、正しい選択肢を選んでいく構成になっています。2回流れる問題と、1回しか流れない問題があり、1回しか流れない問題は当然ながら難易度が上がります。そういった問題でも確実に解答できる状態になるまで事前準備が必要です。
共通テスト英語にはどんな特徴がある?
共通テスト英語の最大の特徴は、長文問題しか出題されないということです。また、単に英文が読めればいい訳ではなく、資料などに書かれている情報も統合して答えを導く必要があることも大きな特徴でしょう。
リスニングが課せられるのも、共通テスト英語の特徴です。今や個別試験でリスニングを課すのは主要な大学は東京大学のみになりました。そんな中、共通テストではリスニングが必須で、多くの大学ではリーディングとリスニングの配点比率が1:1と同程度の重要度となっています。
このように、共通テスト英語は非常に特徴的で、共通テスト英語のための対策をする必要があります。具体的な対策法については後述します。
共通テスト英語と二次試験との違いは?
二次試験といっても大学によって異なるため一概には言えませんが、一般的な二次試験のリーディングでは、英文和訳、和文英訳、自由英作文、要約問題など、ライティングの問題が多いのが特徴です。しかし、共通テスト英語は全問マーク式で、ライティングは一切出題されません。また、二次試験の英語の選択問題では、文法知識を直接的に問う問題も出題されますが、共通テストでは直接的に文法知識を問うような問題の出題はなく、いわゆる「内容一致問題」の出題がほとんどです。
二次試験のリスニング問題は、東京大学と比較すると、共通テストの方は難易度は低いです。というより東京大学のリスニング試験の難易度が非常に高いです。一般の大学のリーディング試験で出るような長さ・難易度の長文がリスニング問題として出題されるからです。なお、東京大学では長い英語長文が一気に読まれ、それについて問われますが、共通テストのリスニングでは短い発話や対話、ディスカッションが流れ、それぞれに対して問題が出題されるといった形式になっています。
共通テスト英語とセンター試験英語との違いは?
センター試験の英語では、文法や発音・アクセントを問う問題が出題されていました。しかし、共通テストからすべてが長文読解形式となっています。発音・アクセント問題はリスニングの方にマージされたと考えられます。
長文問題の出題が多いといっても、センター試験と比べて共通テストでは資料やグラフが多用されるようになっており、文字数も大幅に増加しています。
結果、より短時間で多量の情報を処理しなければならなくなっており、センター試験と比べて共通テストの難易度は上がったといってよいでしょう。
共通テスト英語の難易度はどれくらい?
共通テストの難易度を知るために、平均点の推移をまとめました。
共通テスト英語の平均点推移
共通テスト英語の難しい点
共通テスト英語はどういった点で難しいのかをまとめました。
知識問題が減った
センター試験では文法問題、発音・アクセント問題など、知識があれば確実に得点できる問題がありました。これらは知識さえあれば簡単に解けたのですが、共通テストではこのような問題が出題されなくなりました。センター試験と比べて想定的に難易度が上がったと言えます。
短時間で多量の情報量を処理しなければならない
試験時間に対する文字数、情報量(資料やグラフなど)が非常に増えました。よって、英文をスピーディーに読み理解できることは当然ながら、情報を統合して1つの結論に達するところまで行わなければならなくなり、さらなるスピードと共通テスト英語の特殊な形式に対する対策が必要になりました。
リスニング対策が必須
センター試験ではリーディング200点に対してリスニング50点という配点で、リスニングの難易度も非常に低かったため、コスパを考えても実際的な難易度を考えても対して対策は必要なかったのですが、共通テストになってからはリスニングの配点が増え、難易度も上がったため、しっかりと向き合い対策していく必要が出てきました。リスニングは一般的にリーディングより難しいと言えるため、そういった点で共通テスト英語の難易度は高いと言えます。
共通テスト英語に対する評価
このように共通テスト英語は非常に特殊な試験なのですが、松濤舎では非常にいい試験だと評価しています。
今でも多くの英語試験が、虫食い問題や並べ替え問題、和訳問題などメインに出題しており、英語を暗号解読のようなものだと勘違いさせるようなものが非常に多いです。
一方、共通テストの英語は「英語は情報伝達の手段であって、スピーディーに情報処理できるようになることが最も重要」というメッセージを発しているように感じます。その結果、共通テスト英語で高得点を取ろうとすると、英語を英語のまま理解してスピーディーに処理していこうという動機づけがされるようになります。これが正しい英語学習につながるのです。
また、リスニングの配点が高くなり、試験難易度が上がったことも非常にいいです。リスニング能力は実用英語において当然重要ですし、そもそも「リスニングは負荷を高めたリーディング」という認識があるので、リスニング対策をすることで結果的にリーディングの能力も上がっていきます。
このように、共通テスト英語は「受験英語のための学習」ではなく「本来あるべき英語学習のための学習」につながるような試験設計がされており、非常に優れていると評価しています。
一部では「英語能力以外の情報処理能力が求められる」と言われますが、それは他教科でも同じであり、共通テストは良くも悪くもスピーディーに処理できる能力を試す試験ではあります。しかも他教科と比べて英語は「スピーディーに処理できることこそ重要な能力」と言えるので、情報処理能力が別途必要であることにそれほど違和感はありません。
共通テスト英語の目標点は?
共通テスト英語の目標点は志望校やその子の能力によって異なりますが、国公立医学部の合格者平均の推移を踏まえると、上位医学部で93%前後、中堅医学部で86%前後、下位医学部で83%が目標点となります。
志望校の「合格者平均点」を目標にするのが合理的なので、それを目指しましょう。
共通テスト英語の日程と時間割
英語は試験初日の最終科目として実施されることが多いです。
共通テスト英語の変更点と今後の予想
直近の試験では、リーディングの大問数が変化するなどの変更が見られました。
例えば、2025年度の試験では大問数が8つに増加した一方で、総語数は約4,200語と前年度から減少しました。しかし、解答数は減少しており、一概に負担が減ったとは言えません。むしろ、文章を推敲して修正箇所を選ぶ新傾向の問題が出題されるなど、より深い思考力を要する問題が増加しています。
リスニングでは、登場人物が減って聞き取りやすくなった部分もありましたが、全体的な難易度は維持されています。今後も、複数の情報を統合したり、論理展開を正確に追ったりする高度な情報処理能力を重視する傾向は続くと予測されます。
共通テスト英語に特殊な対策は必要か?
ベースには二次試験対策がありますが、その上で共通テスト英語という特殊な形式へのアジャストが必要になります。詳しい対策法や参考書ルートについては以下の記事にまとめましたので、本記事をもとに、具体的な対策をしていきましょう。