音読はどのように長文読解に寄与するか?
通常、人は文章を読む時に「解析」と「内容理解」という2つのプロセスを並行して行っています。
解析とは単語を見て、発音や意味などの情報を取り出すプロセスのことです。人は、容量制限のある注意を、この2つに振り分けながら文章を読んでいます。
長文読解が苦手な人は、解析ばかりに注意を使ってしまい、内容理解に至りません。
一方、得意な人は解析部分が自動化されているので、多くの注意の容量を内容理解に振り分けることができるのです。
音読はまさに、この解析というプロセスを表出(顕在化)させる活動です。表出させる練習を繰り返すことで解析が自動化され、流暢に読めるようになるのです。
このように、音読の効用は解析の自動化にあります。
左から右に読み下し、直読直解するトレーニング
音読することで、英文を返し読みせず、左から右に読み下して意味を読み取るトレーニングとなります。
音読をする際は「理解しようとしながら」読む
音読は作業になりがちです。
必ず内容理解をしようとしながら読むようにしてください。理解しようとしながら読む場合とただ単語を発音するだけの場合とでは、学習効果に雲泥の差があることが科学的にわかっています。
内容を理解しようとしながら音読することで、「英単語を見て、その発音や意味を取り出す」という解析のプロセスを自動で行いながら、内容理解に集中しながら読んでいくという同時並行処理の回路を強化することができるのです。
「読み方がわかり、音読もできる問題集」を使う
時間制限がある中で長文をパッパと読み進めながら内容理解するためには、「単語を見て、発音や意味などの情報を取り出す」という解析のプロセスを自動化する必要があり、そのために音読できる問題集である必要がある、という話をしました。
しかし、解析はもっとも下位のプロセスであり、これだけでは足りません。次の2つを意識しながら読む必要があります。
- SVを探しながら読む。構造が複雑な場合はSVOCを見抜いて読む。
- 意味のかたまりごとに、左から右へ読み下す。
これができるようになるために、SVOCを振って構造解析したり、意味のかたまりごとに分けて解説してある問題集を最初にやる必要があります。
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音読に対するスタンス
受験生時代、英語は「慣れが重要」などといった感覚的なことばかりを、エビデンスを添えることなく言われてきました。無自覚・無意識な量重視の勉強は効率が悪いと思っていたため、あまり時間をかけませんでした。
すっかり英語は「投資すべき時間が膨大であるにも関わらず、対策の仕方がよくわからない教科」という判断となってしまいました。
しかし、今振り返ってみると、英語は配点が高く、本質的な実力がつけば大きく差をつけられ、安定的に点数も取れるという最重要科目で、なんとしてでも攻略する必要がありました。投資時間が少なかったのは判断ミスでした。
「慣れが重要」に並ぶくらい眉唾だったのが「音読は大事」というアドバイスでした。受験時代に音読は一切やりませんでしたし、長らく英語指導において音読は不要と考えてきました。
しかし、効果的な英語学習法を調べていくと、音読が長文読解に大きく寄与すること、そのメカニズムに納得感があること、実際に指導を通して効果があることを確認しました。
ただし、受験の合否は総合点で決まるため、英語長文にだけ時間をかけることはできません。全体のバランスを確認しながら、音読にかける時間配分は最適化していきましょう。
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