一橋大学世界史の対策|難易度
実際の受験問題を見たことがある受験生なら分かると思いますが、一橋の世界史は非常に難しいです。問題は殆どが全て記述で構成されており、単純な用語問題が出ることは殆どありません。そして出てくる問題も捻った内容のものが多く、
- 聖トマスとアリストテレスの「都市国家」論の相違について(2016年)
- 歴史学派経済学と近代歴史学の相違について (2018年)
- フス戦争の歴史的意義について(2011年)
といったような、時には「この問題に対して立派な答案を作れる受験生は本当に実在するのか?」と考えてしまうような難問が出題されることも珍しくありません。日本最難関と名高い東大でも知識問題が出たり、記述も常識的な範囲の難易度の問題が多かったりすることを考えると、まさしく一橋の世界史は「国内最難関」といっても過言ではないでしょう。
しかしながら、そんな一橋世界史も正しいやり方で対策していけば、必ず得点源にすることができます。
一橋大学世界史の対策|傾向と形式
一橋大学は例年大問が3つ出題され、全て記述問題です。解答欄は大問ごとに400字で、一問に400字を全て使う大問もあれば、2~3つの小問に分かれている大問もあります。
逆に知識問題が出ることは殆ど無く、出ても配点は僅かです。世界史の配点は社会学部>法学部=経済学部>商学部の順に大きくなるので、該当学部の受験生ほど本格的な対策が必要となります。
傾向としては、中近世ヨーロッパ史と近現代東アジア史は最頻出分野となります。例年大問1では必ずと言っていいほど中近世ヨーロッパ史(5世紀~16世紀くらいまで)が出題され、大問3は大問1ほどではないものの、近現代東アジア史(19世紀~20世紀)が出題されることがかなり多いです。
それ以外にも、近現代のヨーロッパ・アメリカ史や14世紀以降のアジア史などから幅広く出題されますが、これらの範囲から前述したような難問が出ることは殆ど無く、教科書や用語集の範囲を超えない常識的な問題が出題されることが多いです。また、ローマ以前のヨーロッパ史や、中世以前のアジア史が出題されるケースは、過去20年分ほど遡っても殆どありません(もっとも、2017年などごくまれに出題されるケースがあるので要注意ですが)
こうして考えてみると、一橋の世界史は問題の難易度自体はともかく、傾向自体は非常に分かりやすいと言えるでしょう。そしてそれは裏返せば、「一橋の世界史は対策しないと厳しいけど、対策さえきちんとすれば誰でも合格点を狙える」ということを意味します。
一橋大学世界史の対策|勉強法
一橋大学世界史対策を開始する時期
まず、世界史はいつから本格的に勉強し始めたらいいかについてですが、英数国が余程固まっていない限り、本格的な勉強は高3の春くらいから始めることをお勧めします。なぜかというと、早期の世界史やりこみには、
- 世界史が好きな人は、英数国などの主要科目をおろそかにして世界史にのめりこんでしまう可能性がある
- 高2までの模試は世界史がないことが多く、自分の実力を測りづらい
- 世界史は覚える内容が多く、英語もまだ覚えきれていないうちに記憶容量を圧迫してしまう
といったリスクがあるからです。とはいっても、高3の段階で全くのゼロから覚えていくのは厳しいので、高1・高2のうちから世界史の授業はしっかり聞き、定期試験の対策をしておく前提となります。
一橋大学世界史対策向け教科書/参考書
次に、本格的な勉強を始めるにあたって、どういった参考書を使ったり、どういった勉強をしたりすればよいかについて。
教科書は学校で使っているものでもよいですが、お勧めは山川出版社の「詳説世界史B」です。他の教科書と比べても山川の教科書は分かりやすく、内容も充実しています。これで基本的な用語を覚えるとともに、何周も読んで歴史の流れを頭に入れてしまいましょう。教科書は通史を勉強するテキストとしての役割だけでなく、論述の練習をする際に辞書のような役割も果たしてくれるので、非常に便利です。
なお、教科書の通読を通したインプットは効率が悪いので、松濤舎では『時代と流れで覚える! 世界史B用語』を使った教科書内容のインプットを行っています。
さて、山川出版社の「詳説世界史B」を辞書的に使うとしても、一橋の難しい中世史問題には十分に対応しきれません。そこで山川出版社の「詳説世界史研究」など、「詳説世界史B」よりも詳しく、多くの内容が書かれている教材を持つ必要があります。世界史があまり得意でない人も、1冊買ってヨーロッパ中世史のところだけ何度も読んだり、時には辞書代わりとして活用したりなどと幅広い用途に使えます。
松濤舎では流れを押さえつつ詳細に知識が載っている『ストーリーでわかる世界史B』シリーズが特にオススメです。
逆に世界史が苦手な人には、まずは教科書を分かりやすくかみ砕いた参考書で流れを掴むとよく、『これならわかる!ナビゲーター世界史B』や『荒巻の新世界史の見取り図』といった参考書を持ちましょう。
学校の授業がわかりにくいということであれば、YouTubeチャンネル『Historia Mundi』をひと通り視聴してもよいでしょう。
とはいっても、これらだけで一橋の世界史レベルの学力を身に着けるのは難しいのでご注意ください。
一橋大学世界史対策の用語集
暗記用や辞書用の用語集としては、『時代と流れで覚える世界史B用語』で足ります。一橋の世界史は難しいとはいえ、難関私大のようなマニアックな用語知識が必要なケースは一部の中世史問題を除いてほとんどありません。
それでも不安な人や早慶などの難関私大も併願する人は、私大向けの難関用語が多く載っている東進ブックスの『世界史B一問一答』を購入し、ヨーロッパ中世史を中心としたマイナー用語を覚えておくと私大の併願や本番で難問が出た際に役立つかもしれません。辞書としても活用できます。
一橋大学世界史対策の論述対策
論述用の参考書についてですが、解説がいい加減なものも多いので注意が必要です。数ある参考書の中でもお勧めは中谷臣氏の『世界史論述練習帳new』で、他の参考書では学びにくい「論述の書き方」について、体系的に学ぶことができます。別冊に「基本60字」があり、練習できる問題量が多いのもポイントです。これ一冊あれば大いに論述力を高めることができますが、もう少し記述を練習したい方は一橋の過去問は勿論のこと、東大など論述問題が出る大学の過去問も有効活用していきましょう。
なお、『世界史論述練習帳new』の「基本60字」には合計280問載っているため、余裕があれば全てやった方がよいですが、他科目との兼ね合いもあるので、余裕がなければ一橋大学で殆ど出ない古代史や中世までのアジア史の部分などは飛ばしてもよいでしょう。少なくとも、中世以降のヨーロッパ史と近現代東アジア史の部分は、基本60字を覚えておくとかなり有利になることは間違いありません。
一橋大学世界史対策の目安スケジュール
春から夏までは論述の練習は一切せず、ひたすら歴史の流れと用語を覚えましょう。その際、教科書や用語集を流し読みするだけでなく、きちんと書いて覚えると記憶に残りやすいです。ただし、頭の中で想起できないものを書いて覚えようとするのは効率が悪いので、想起できるようになったら書き出すようにしてください。
夏以降は用語や歴史の流れの勉強を継続しつつ、少しずつ論述の勉強を始めていきましょう。遅くもセンターまでには用語を完成させて(これができればセンター世界史も9割は固い)、センター後は二次試験までひたすら論述の答案を作る練習をしましょう。
論述の答案は環境さえあれば学校の世界史の先生などに見てもらうのが良いですが、どうしても自己採点に頼らざるを得ない時は、参考書の採点基準をしっかり見て、どういう答案を作るべきなのかを常に意識して学習するようにしましょう。「模範解答を何度も書き写す」という一見駄目そうな勉強方法も、一橋世界史対策には大いに役立ちます。一橋世界史は過去問と似たような問題が出題されることも多いので、過去問10数年分や論述練習帳の模範解答をだいたい暗記できれば、その知識で対応できる問題も多いからです。
一橋大学世界史対策としての過去問演習
一橋大学の世界史20か年の問題集が出ているので、その20年分は解くことをお勧めします。一橋は過去問の類題が出ることが多く(例えば、カール大帝に関する問題などは何度も出題されている)、演習量がものを言うので、他科目とのバランスもありますが基本的に多く解くに越したことはありません。
他大学の過去問をするなら、教学社から『世界史〇〇ヵ年』が出ている京大や東大の過去問を解くのをお勧めします。年度には拘らず、文字数の多い論述問題や、ヨーロッパ中世史など一橋の頻出単元に絞って勉強していくのがよいでしょう。
一橋大学世界史の対策|最後に
一橋は確かに難しい問題が多く出題されますが、傾向は非常に分かりやすく、対策すれば比較的容易に合格点を狙える科目であると考えています。点数は公表されませんが、目安としては全体の半分以上の得点が取れれば合格点に届くでしょう。世界史を得点源にしたい人はどんな問題が出てきても半分以上取れるようする、世界史が苦手な人は中近世ヨーロッパ史や近現代アジア史といった最頻出単元の問題は最低限解けるようにするといったように、他の科目とのバランスを考えつつ各々の目標を設定し、そこに向けて意欲的に世界史学習に取り組んでいきましょう。