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【徹底比較】「国立医学部 vs 私立医学部」|学費・入試・難易度・キャリアの違い(2026年最新版)

「医学部に行きたいけど、国立と私立ってどう違うの?」
「学費は?難易度は?どちらが自分に向いているの?」

そんな疑問を持つ受験生や保護者の方のために、この記事では国立医学部と私立医学部の違いを徹底比較しました。

最新データ・具体例をもとに、進路選択のモヤモヤをスッキリ解消します。

目次

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国公立医学部と私立医学部のここが違う ─ 早わかり一覧

国立医学部と私立医学部では、学費入試制度難易度卒業後の進路など様々な点で違いがあります。まず全体像を簡潔にまとめると以下のようになります。

国公立医学部と私立医学部違い①:学費

国公立医学部は6年間で約350万円であるのに対し、私立医学部は平均約3,200万円と高額です。国立は税金に支えられた低学費のため、多くの医学部志望者が第一志望にします。私立は大学ごとに学費に大きな幅があり、安い大学ほど人気が高く難易度も上がる傾向があります。

国公立医学部と私立医学部違い②:入試制度

国立医学部は大学入学共通テスト受験が必須で、6教科8科目もの広範な科目対策が必要です。共通テスト後に各大学の二次試験(筆記や面接)に進みます。一方、私立医学部は共通テストを課さない大学がほとんどで、英語・数学・理科2科目の計3教科(4科目)+面接・小論文で独自試験を行います 。私立は大学ごとに試験日程が異なるため複数併願が可能ですが、国立は日程上一校のみの出願になります。

国公立医学部と私立医学部違い③:難易度・倍率

どちらも競争激化で難関ですが、一般に国公立医学部の方が偏差値上位層が集まり難易度が高い傾向です 。国公立医学部は定員が少なく共通テストから足切りがあるため実質倍率3〜4倍程度(2023年度前期の実質倍率は3.3倍)とされます 。私立医学部は志願者数が多く表面的な倍率は20〜30倍になる大学もありますが、実際には合格可能ラインの受験者同士の競争に絞れば2〜3倍程度との指摘もあります 。いずれにせよ、いずれの医学部も高い学力と周到な対策が要求されます。

国公立医学部と私立医学部違い④:卒業後の進路

勤務医として臨床現場に進む人が大半で、国立・私立の別による資格試験(医師国家試験)の差はありません。ただし、国公立医学部は研究医養成の歴史が長く、大学院進学や研究医の道に進む割合がやや高い傾向があります。

一方、私立医学部は臨床志向が強く、卒業後すぐ研修病院で臨床医となるケースが多いと言われます(詳細は後述)。また、学費負担の違いから、私立出身者は奨学金返還義務など経済面の事情を抱える場合もあり、勤務先選択に影響することもあります。

以上のように、「学費の国立 vs 設備充実の私立」「入試科目数(国立は広く、私立は狭く深く)」「難易度の質的な違い」「進路・キャリアの志向性」などでそれぞれ特色があります。以下、各項目について最新データや具体例をもとに詳しく比較していきましょう。

学費の違い|6年間総額・奨学金・地域枠まで徹底比較


まず最もわかりやすい違いとして学費があります。医学部は他学部と比べ群を抜いて学費が高額ですが、その中でも国公立と私立で大きな開きがあります。ここでは両者の6年間総額と内訳、学費負担を軽減する奨学金制度や地域枠制度について比較します。

国公立医学部の学費平均と内訳

国立・公立大学医学部の学費は文部科学省が標準額を定めており全国ほぼ一律です。入学金は約28万円、授業料は年額53万5,800円前後で、多くの大学で6年間合計約350万円ほどになります 。東京大学医学部でも地方国立でも授業料は同額です。東京科学大学など一部の公立大学で値上げ事例はありますが微々たるものです。この約350万円という額は、私立医学部の平均学費約3,200万円のわずか1/10に過ぎません。国家の税金投入により安価に医学教育を受けられる仕組みであり、「国公立医学部=学費負担が小さい」は、国公立医学部の大きな魅力になっています。

ただし、国公立でも自治体立の公立大学では、出身地域によって入学金が異なることがあります。例えば、奈良県立医科大学福島県立医科大学では、県外出身者の入学金が地元出身者より高額(80万円超など)に設定されています 。志望校が他府県の公立大学の場合、入学金の金額も確認しておくとよいでしょう。

授業料以外にも、教科書代・教材費、実習器具費、学外実習旅費、学生医療保険料など、細かな出費が発生します。大学や学年によりますが、6年間の教材費(教科書や国家試験対策問題集など)は総額10万〜20万円程度が平均とされます。さらに、白衣・聴診器など実習用具一式に5万円前後、B型肝炎ワクチン等の予防接種代や傷害保険料が数万円かかるケースもあります。これらは大学によって異なりますが、「学費以外にこれだけの付帯費用も必要」と念頭に置き資金計画を立てる必要があります。

国公立医学部の学費負担が難しい場合でも、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金や大学独自の授業料免除・減免制度、特待生制度などが利用できます。成績優秀者には授業料半額・全額免除を行う大学もあり、経済的ハンデを軽減する措置が整っています。

私立医学部の学費平均・安い順ランキング

一方、私立大学医学部の学費は大学によって大きく異なります。平均は、6年間で約3,200万円と国公立の約9倍にも達しますが、最も学費が安い私立医学部で1,850万円程度、逆に最も高額な大学では4,600万円以上となり、その差は2,500万円以上にのぼります。文科省による全国一律の標準額は無いため、各大学が独自に設定した結果、大きな開きが生じています。2020年代に入り私立医学部の学費値下げ競争が進み、6年間2,000万円台前半の大学が増えてきましたが、それでも国立と比べれば非常に高額といえます。なお、学費が比較的安い大学は難関校が多く、奨学金や特待制度が充実しているケースも見られます。

以下に、主な私立医学部31校の6年間学費総額(入学金・授業料・施設設備費等を含む)を安い順に示しました。初年度納入金欄は入学金を含む1年次の学費で、次年度以降欄は2年次以降1年間あたりの学費です。大学により年次ごとの金額差がある場合は平均的な値を記載しています。

順位大学名初年度納入金次年度以降(年額)6年間総額
1国際医療福祉大学4,500,000円2,800,000円18,500,000円
2順天堂大学2,900,000円3,580,000円20,800,000円
3関西医科大学2,900,000円3,620,000円21,000,000円
4日本医科大学4,500,000円3,500,000円22,000,000円
5東京慈恵会医科大学3,500,000円3,800,000円22,500,000円
6慶應義塾大学3,943,350円3,716,250円22,659,600円
7自治医科大学5,000,000円3,600,000円23,000,000円
8東邦大学4,800,000円4,200,000円26,297,800円
9昭和大学4,500,000円4,500,000円28,145,000円
10大阪医科薬科大学5,985,000円4,485,000円29,075,000円
11東京医科大学4,800,000円4,920,000円29,400,000円
12産業医科大学5,915,000円4,915,000円30,490,000円
13藤田医科大学6,300,000円4,745,200円30,526,000円
14日本大学6,350,000円5,390,000円33,380,000円
15東北医科薬科大学6,500,000円5,500,000円34,000,000円
16岩手医科大学9,000,000円5,000,000円34,000,000円
17愛知医科大学8,200,000円5,200,000円34,200,000円
18聖マリアンナ医科大学6,970,000円5,570,000円34,820,000円
19東海大学6,773,200円5,770,000円35,506,200円
20近畿大学6,804,500円5,804,500円35,827,000円
21久留米大学9,313,000円5,213,000円36,378,000円
22獨協医科大学8,600,000円5,600,000円36,600,000円
23杏林大学9,500,000円5,500,000円37,000,000円
24兵庫医科大学8,500,000円5,700,000円37,000,000円
25埼玉医科大学8,250,000円5,750,000円37,000,000円
26福岡大学8,626,710円5,822,310円37,738,260円
27北里大学9,000,000円5,980,000円38,900,000円
28帝京大学9,362,000円6,002,000円39,372,000円
29金沢医科大学11,000,000円5,740,600円40,443,000円
30川崎医科大学10,500,000円7,000,000円45,500,000円
31東京女子医科大学11,300,000円6,953,000円46,214,000円

・数値は各大学公式サイト・募集要項(2025〜2026年度)より集計。
・藤田医科大学は 2026年度から学費減額予定(6 年間総額 21,520,000 円)を公表していますが、ここでは現行学費で算出しています。

学費総額の安い私立医学部としては、国際医療福祉大学(約1,850万円)順天堂大学(約2,080万円)慶應義塾大学(約2,200万円)などが挙げられます。一方、学費が高額な私立としては、川崎医科大学(約4,725万円)、金沢医科大学(約3,780万円)などがあり、これらは偏差値が私立の中では相対的に低めです 。このように、私立医学部内では、偏差値の高さと学費の安さが反比例する傾向があります。実際、ある大学が学費を大幅値下げした年は志願者数が増え倍率が上昇し、逆に学費値上げを行った大学では志願者が減り倍率低下を招いています。

私立医学部の学費内訳を見ると、入学金(数十〜数百万円)、授業料(年間数百万円)、施設設備費実習費教育充実費同窓会費など多岐にわたります。例えば、ある大学では「実習費30万円、施設設備金40万円、教育充実費1000万円(※10万円ではなく1000万円の可能性)、後援会年会費15万円…」といった明細が公表されています。名称は様々ですが、設備維持や実習運営に多額の費用がかかることから、高額な納付金となっているのです。

こうした学費負担を和らげるため、私立医学部でも特待生奨学金独自の学費減免制度が充実してきています。成績上位合格者に対し入学金免除・授業料全額免除(6年間で数千万円相当)を与える大学(例:関西医科大学の特待制度 )や、自治体と提携して学費を一部補助する地域医療奨学金枠を設ける大学(例:埼玉医科大学・北里大学など)もあります 。また日本政策金融公庫の教育ローンや民間の学資ローンを利用して入学する家庭も珍しくありません。「私立医学部=お金がかかるから無理」と早合点せず、各大学の奨学金情報を確認したり、必要なら経済支援策を検討することが大切です。

最後に、地域枠(地域医療枠)について触れます。これは国公立・私立を問わず医学部で近年設けられている制度で、卒業後に一定年数(多くは9年間前後)特定地域の医療機関で勤務することを条件に、在学中の学費支援を受けられるものです 。地域枠入試では出願要件として出身地や将来勤務の意思条件が課され、合格難易度は一般枠より低めに設定されていることが多いです。実際、2007年に全体で173人だった地域枠定員が、2020年には1,679人(定員の18%)まで拡大して色、学費全額免除・支給を受けて地元医療に貢献しようと志す学生も増えています。ただし、卒業後に科や勤務地の自由が制限されるデメリットもあり、「学費0円」に惹かれて地域枠に入ったものの、義務途中で辞退する医師も問題化しています 。地域枠を検討する際は、奨学金返還免除の条件(○年間勤務など)とペナルティ(途中離脱時の違約金等)をよく理解した上で判断しましょう。

入試科目数と入試形態の違い(共通テスト/併願可否/一発勝負問題)

入試制度の違いも、国立と私立で大きなポイントです。国公立医学部は国が定める一般選抜方式に従うため全国共通の枠組みがありますが、私立医学部は各大学ごとに独自色の強い試験を実施します。この節では受験科目数や入試日程、併願の可否、「一発勝負」の意味合いなどを比較します。

まず国公立医学部を受験するには、毎年1月実施の大学入学共通テストを必ず受けなければなりません。医学部の場合、共通テストで課される科目は一般に6教科8科目にも及びます 。具体的には「英語・数学・国語・理科2科目・社会1科目・情報」を受験する必要があり、理系最難関学部と言われるだけあって文系科目も含めた広範な学力が要求されます。共通テスト後、各大学は受験者の自己採点等をもとに出願を受け付け、前期日程(2月後半〜)および一部大学では後期日程(3月上旬)の二次試験を実施します 。二次試験は大学ごとに異なりますが、典型的には数学・理科・英語などの筆記試験+面接(+小論文)です。配点比率は大学により様々で、共通テスト重視型から二次試験重視型まであります。さらに志願者数が募集人員の一定倍率を超えた場合、共通テスト得点による一次選抜(いわゆる足切り)が実施され、基準点未満の受験生は二次試験に進めません 。このように国立医学部入試は「共通テスト+二次試験」の総合点で合否が決まるという、一発の筆記試験だけでなくトータルな学力・適性を見る仕組みとなっています。

一方、私立医学部の一般入試は大学ごとに日程が異なり、1月中旬〜2月中旬にかけて各校の試験日が分散しています。したがって医学部志望者は複数の私立医学部を併願受験することが可能で、極端な場合10校以上に出願するケースもあります 。試験科目は国公立ほど多くなく、英語・数学・理科2科目(化学+生物or物理など)の3教科4科目が中心です 。加えて面接がほぼ全ての私立医学部で課され、小論文を課す大学も多いです 。私立医学部では共通テストを課さないのが原則ですが、一部大学では共通テスト利用入試(センター利用入試)枠を設けており、共通テストの高得点者を対象に合否判定する方式もあります。募集人員はごく少数ですが、出願しておくと共通テストの点数だけで合格がもらえるため、基本的には独自試験での勝負となりますが、出願を推奨しています。

併願可否についてまとめると、国公立医学部の場合は前期日程で一校、後期日程で一校の計2校までしか出願できません。ほとんどの受験生は前期に第一志望校を受け、そこで不合格なら後期で別の一校を受ける、という流れになります(ただし、近年は後期募集を行う医学部自体が減少しています)。つまり、国立医学部志望者にとっては事実上一発勝負の側面が強く、「2月25日から始まる前期試験に持てる力を全て出し切るしかない」という緊張感があります。これに対し私立医学部では、例えば1月中旬に愛知医科大学、1月下旬に東京慈恵会医科大学、2月初旬に順天堂大学…というように連日のように試験を渡り歩き複数合格を狙うことも可能です。スケジュール調整や体力面の負担、過去問演習が十分できるかという違った論点はありますが、私立医学部の場合はチャンスが複数回あります。併願戦略としては、難易度の異なる私立を「チャレンジ校+適性校+安全校」のように組み合わせて出願し、安全校を確保しつつチャレンジ校合格を目指すのが一般的です。

なお、私立医学部の入試は国公立医学部と比べ、問題傾向が大学ごとに独特である点に注意が必要です。ある大学は超難問揃い、別の大学は標準レベルだが制限時間が極端に短い…など千差万別で、「私立医学部の過去問対策」が重要になります 。逆に言えば、共通テスト対策のように画一的ではなく、各大学の傾向にハマる対策ができれば合格の可能性が高まるということでもあります。国公立と違い受験者層も多様で、極端な高倍率に見えても実際には一定以上の学力層の争いになります。

難易度と倍率の最新データ|偏差値・志願者数の推移


入試難易度を測る指標としては、「偏差値」や「実質倍率」「合格最低点」などがあります。国立と私立の難易度を単純比較するのは難しいですが、この節では最新のデータをいくつか紹介しながら傾向を述べます。

偏差値から見る難易度

松濤舎のまとめた医学部偏差値ランキングによれば、国公立医学部の偏差値帯(=合格者平均偏差値)はおおむね62.5〜75の範囲に収まっています 。トップは東京大学理科三類の約76で、次いで旧帝大や難関国立が70〜72.5付近に位置します。一方、私立医学部の偏差値帯は60〜72.5で、トップクラス(慶應義塾大学、慈恵会医科大学、順天堂大学、日本医科大学など)は70前後、下位校は60前後となっています 。私立最難関と国立最難関は偏差値上は拮抗していますが、国公立は科目数の多さと募集人数の少なさにより合格ハードルが総合的に高いと言われます。

偏差値というのは母集団における位置付けを意味しており、難易度測定において最も重要な指標と言えます。特に河合塾の全統記述模試は「学習指導要領の範囲内から出題される」という性質を持ちつつ、医学部志望生が多く受けている模試になります。

特に松濤舎が採用している「合格者の平均偏差値」は、河合塾の発表している「ボーダー偏差値」と違い、曖昧さを排除した数値となっていますので、目指すべき偏差値として採用してみてください。

志願者数・倍率の動向

医学部志願者数は近年増加傾向が続いています。文科省公表データによれば、2023年度国公立医学部前期日程の志願者数は15,960人(前年比+5.8%)となり3年連続で増加しました 一般前期の募集人員3,578人に対し受験者数12,383人合格者数3,724人で、実質競争倍率は約3.3倍でした 。国公立医学部の場合、共通テスト後に志望校変更が起こる「志願者の移動」が見られ、前年倍率が高かった大学は翌年志願者が敬遠しがちになる(隔年現象)とも言われます 。しかし、倍率が合格難易度に及ぼす影響は限定的で、実際に倍率が大幅に上がった年の「合格者の平均偏差値」を見ても、大きく変動がないのが現実です。これは、共通テストの点数によって移動する層の大半は、合格可能性がもともと低い層で、合否に影響がないからと考えられます。例えば、共通テストの足切りが実施されない大学に出願する人が多いケースなどが挙げられます。受験生は過去数年の志願動向を参考にしつつも、「倍率が高いから難しい/低いから易しい」といった安直な理由で志望校を変えることはせず、共通テストの点数(平均点との乖離)、全統記述模試の変動、問題集の習得レベル、過去問演習の点数などを元に総合的に判断し、再現性をもって固く合格できそうな大学に出願することが求められます。

私立医学部の応募者動向も、近年は定員増学費値下げの影響で志願者数が増える大学が目立ちます 。私立の場合、一人の受験生が複数校に出願するため単純に合計した人数はあまり意味を持ちませんが、それでも人気校では数千人規模の志願者が集まります。例えば、昭和医科大学医学部(I期)は、2023年度、募集約83名に志願者2,674名・受験者2,403名となり実質倍率約10.3倍でした 。ただし、定員を大きく上回る延べ志願者がいても、実際に合格可能圏の受験生は限られるため、実質的な競争倍率は2〜3倍程度と言えます 。私立医学部では補欠合格から繰り上がりで合格するケースも多く、最終的な入学定員充足率は100%を超える大学もあります(複数合格者の辞退補充)。したがって数字上の倍率に過度に惑わされず、自分の学力で合格最低点に届くかという視点で準備を進めることが肝心です。

入りやすい医学部 vs 難関医学部|国立・私立の代表例

「入りやすい医学部」と「超難関医学部」の例として、偏差値や合格難易度の観点からいくつか具体的な大学を挙げてみます。ただし、医学部である限り容易な大学はないことは大前提です。その上で、相対比較として難易度低めとされる国公立・私立、そして難関とされる医学部を紹介します。

偏差値が低めの国公立医学部

国公立医学部で偏差値が比較的低めに出ている大学としては、弘前大学、島根大学、旭川医科大学、秋田大学などが挙げられます 。これらはいずれも、地方所在で募集人員も100前後と比較的小規模な医学部です。二次試験科目を見ると、弘前・島根・旭川・秋田はいずれも、二次筆記が2科目のみ(英語・数学)である点が共通しています。科目負担が少ない分、共通テスト高得点+英数に特化した受験生には狙いやすい側面があります。

他に、愛媛大学、大分大学、富山大学、佐賀大学などは二次試験科目は英語・数学・理科2科目の一般的な科目の大学で比較的偏差値が低い大学になります。英語・数学が特段得意ということでなければ、どのみち共通テストで理科も必要になるため、本番で英語・数学における思わぬ失点があることを考えれば、緩衝材として理科も受けられるこれらの大学を受験しておいた方が無難です。

入りやすい私立医学部とその特徴

私立医学部で難易度が低めとされる大学には、東京女子医科大学川崎医科大学金沢医科大学埼玉医科大学などがあります 。これらの大学はいずれも独自入試の筆記科目数が4科目(英語・数学・理科2科目)で共通しています 。特徴として、都市圏から離れている立地(川崎医大は岡山県、岩手医大は盛岡市、金沢医大は石川県、福岡大は埼玉県郊外)や、学費が平均より高額(川崎医大は私立最高の約4,725万円)といった点が見受けられます。つまり、場所や経済負担の条件面で志願者が限られやすい大学が該当しているのです。特に、川崎医科大学は学費の高さゆえ敬遠されやすく、その分偏差値が低めに出ています。

また別枠ですが、自治医科大学防衛医科大学校は特殊な位置付けの医科大学で、学費無料等のメリットがある反面、卒業後に長期間特定の勤務義務が課されます。自治医大は各都道府県ごとの募集で地域医療志向の受験生が集まり難易度は高めです(出願には地元推薦など要件あり)。防衛医大も定員約100名に対し志願者が毎年数千人と狭き門です。単に入りやすさだけでなく、自分の将来計画に合った大学なのかをよく考えて選択する必要があります。

偏差値70超の超難関国立医学部(東大・京大など)

次に超難関と言われる医学部の例です。国立ではやはり東京大学理科三類京都大学医学部が双璧で、日本の大学入試で最高峰の難易度です。これらはいずれも全国トップクラスの受験生が集まります。大阪大学医学部東京科学大学名古屋大学医学部など旧帝大クラスも当然のように難関です。

私立医学部でも慶應義塾大学医学部は突出した難易度で知られます 。慶應医学部は6年間で臨床・研究ともに評価の高い教育を行っており、定員約70名に対し全国から優秀な受験生が集まります。同じく東京慈恵会医科大学日本医科大学順天堂大学あたりも私立御三家・準御三家と言われ、合格は狭き門です。これら上位私立は学費が比較的安いこともあり(順天堂約2,080万円、慈恵会約2,500万円台)、志願者数も非常に多くなります。私立最難関では共通テスト利用合格者など超高学力者も混在するため、一般入試組だけでなく全方位で対策を万全に期す必要があります。

まとめると、国公立医学部では入りやすいところでも共通テストの得点率は高く、二次試験も同じような学力の受験生が集まりがちで難易度は高いです。私立医学部では入りやすい大学はそもそも学費が高く、受験できる学生が限られてしまうという違った難しさがあります。難関医学部では国公立医学部の方が多く、私立医学部は慶應義塾大学くらいですが、東京慈恵会医科大学、日本医科大学、順天堂大学も十分難関と言えます。自分の学力や家庭状況、将来像に照らして、現実的かつ納得できる志望校を選ぶことが重要です。

出願のしやすさは?|共通テスト・推薦・併願の違い


医学部受験では出願戦略が合否を左右します。国公立と私立で出願条件や併願可否が大きく異なるため、「どの方式でどの大学を受けるか」を早めに方針決定しておくことが大切です。また推薦入試や地域枠入試など一般入試以外のルートもあります。この章では国立医学部の出願条件、私立医学部の併願パターン、推薦・地域枠の活用法について述べます。

国立医学部の出願条件(共通テスト重視)

国立医学部志望者は大学入学共通テストの受験が必須です。その得点が一定ラインに達しなければ二次試験に進めない(足切り)もありますが、そこを気にするくらいの学力ではどのみち合格はできません。共通テストの配点比率は、大学の難易度が上がるほど低くなる傾向にありますが、それでも合格平均点近く取れるよう共通テスト対策をしっかり行う必要があります。当然ですが、共通テストで高得点を取れば出願可能な大学の選択肢が広がり、有利に戦えます。逆に、出来が悪いと、共通テストの合格者平均得点率の低い大学に志望変更するなどの調整が必要です。

出願校を決める際は、各大学の共通テスト配点比率を考慮する必要があると言われることがありますが、それより重要なのが合格者の平均得点率です。共通テストの配点比率も含めた合格者の平均得点率なので、ここを超えている必要があります。合格者の平均得点率は松濤舎が発表しているので、そちらを参考にしてみてください。

難関大学ほど共通テスト配点が低め(=二次重視)で、ボーダー偏差値レベルの層での勝負になりやすいと言われますが、中堅〜地方大学では共通テスト高得点者が有利になる「共テ逃げ切り型」の大学も存在します 。たとえば、徳島大学は二次:共通テスト比がおよそ1:0.44と共通テスト重視で、二次試験の偏差値が低めなため、共通テストでの高得点勝負になりやすい大学です。「共テ得点型」か「二次逆転型」かというざっくりとしたタイプ分けよりも、共通テストの得点率が合格者平均を超えているかが重要です。

もう一点、国公立医学部では推薦入試(総合型選抜含む)にも注目しましょう。医学部の推薦・AOは募集人員が少ないものの、学力試験に加え高校での活動実績や適性を見る選抜です。一般選抜より偏差値的には低いケースが多く 、評定平均や課外活動が優れている受験生にはチャンスです。ただし地域枠推薦が中心で、卒後の勤務地拘束など条件が付くことが多い点には注意してください。

私立医学部の併願戦略(入試日程の組み方)

私立医学部志望者にとって、複数校併願は合格可能性を高める基本戦略です。前述の通り試験日程が大学ごとにずれているため、1月中旬から2月中旬までの約1か月間で主要な私立医学部をほぼすべて受験することも可能です。実際、関東の医学部志望者なら「日本大学→昭和大学→順天堂大学→慈恵医大→東邦大…」という具合に連日受験するケースもあります。体力・精神力的にハードではありますが、私立専願であれば合格のチャンスを最大化するため出願校をできるだけ広げるのが一般的です。

とはいえ受験料も1校あたり約3〜4万円かかるため、無制限に受けるわけにもいきません。過去問演習を通した対策にも時間が必要です。志望順位や自分の偏差値との兼ね合いで、チャレンジ校・適正校・安全校をバランス良く選ぶことが大切です。1つの目安として、私立医学部専願の場合で8校、国公立医学部併願の場合で4校の受験を上限とするとよいでしょう。

というのも、最後の全統記述模試が10月中旬にあるのですが、そのあとから過去問演習を本格的に開始するとして、1大学あたり3年分の過去問演習をする場合、週1校の過去問演習で4大学、週2校の過去問演習で8大学、過去問を解くことができるからです。国公立医学部受験生は週1回、共通テスト関連の演習をすると考えれば4大学、それがない私立専願で8大学を上限とすれば無理なく問題集の復習を進めながら過去問演習をし、出願校の数を最大化することができます。

ちなみに、多くの私立医学部では複数回の試験チャンス(一次試験日程)があります。例えば、昭和大学はI期・II期の2回、東京慈恵会医大は一般と大学入学共通テスト利用、近畿大学医学部もA日程・B日程など、複数の機会を用意しています。とはいえ、日程によって枠数が少なく、ほぼ合格が望めないような枠もあります。全てに出したらいいというわけではなく、専門家のアドバイスを得ながら賢く出願すべきと考えます。

最近は国公立志望でも私立医学部を併願する人が増えており(=先述の通り4校を上限とした出願を推奨)、私立上位校では国公立併願組が多数合格して辞退する傾向も見られます。そのため、補欠→繰り上がり合格の連絡が卒業間際まで続く大学もあります。併願者は国公立合格発表後に私立を辞退するケースが多いので、繰上合格のチャンスにも最後まで注意しておきましょう。

推薦・地域枠入試の活用と注意点

医学部には学校推薦型選抜(指定校・公募)や総合型選抜(旧AO)も存在します。国公立医学部では地域医療枠の推薦が中心で、例えば新潟大学医学部地域枠は「卒後9年間県内勤務」を条件に県推薦を受けて受験できます。私立でも岩手医科大や産業医科大などで総合型選抜が行われています。これらの特徴は、定員が少ない代わりに学力偏差値より人物重視で合格のチャンスがあることです。評定平均や小論文・面接、さらには適性検査や課題活動の成果など総合評価されるため、学業以外にアピールポイントがある受験生は比較的有利です。「比較的」と言ったのは、結局学力で判断される部分が大きいためです。選考過程が不透明なのでなんとも言えませんが、学校推薦型選抜・総合型選抜に期待しすぎるのは危険です。また地域枠推薦では上記の通り学費減免など経済的メリットが大きい場合があります 。

注意点として、推薦で不合格になった場合の制約があります。多くの大学で推薦入試を受けると一般入試との併願が不可になったり、その年度の一般入試を受けられなかったりすることがあります。高校調査書が必要で学校の許可も必要な場合があり、安易に複数トライできるものではありません。また地域枠の場合は前述のように卒後の勤務義務があります。自分が本当にその地域医療にコミットできるか、奨学金免除の条件を全うできるかをよく考える必要があります。

総じて、学校推薦型選抜・総合型選抜は、「学力試験一発勝負では測れない適性」を評価するルートではあるので、自分の強み(リーダーシップ、研究活動経験、地域医療への熱意など)にマッチする募集要項があれば検討する価値があります。反対に、単に「偏差値的に厳しいから推薦で」程度の動機では合格は難しいです。

卒業後のキャリアに違いはある?|勤務医・研究医・開業医の選択肢


医学部卒業後の進路は基本的に医師国家試験合格→臨床研修医という道を辿りますが、その後のキャリア選択は人によって様々です。国公立出身者・私立出身者で統計的な差異があるかについては明確なデータは限られますが、一般論としていくつか言われる傾向があります。この章では、国公立医学部卒業生に多い進路、私立医学部卒業生に多い進路、そして奨学金や地域枠がキャリアに与える影響について述べます。

国公立出身者に多い進路傾向

国公立医学部は旧制医学専門学校時代から研究医や大学教員の養成を目的にしていた歴史があり、現在でも基礎研究やアカデミックな医師を輩出する割合が高いと言われます。具体的には、国公立医学部の卒業生は大学院に進学して医学博士号を取得し、大学病院の医局に所属するといったキャリアパスを選ぶ人が比較的多い傾向です。大学病院の医師として臨床と研究・教育を両立し、将来的に教授など教育者・研究者になる道です。特に旧帝大系や医科歯科大など研究力の高い大学では、このような研究志向の学生が集まりやすくなっています。また国公立は附属の大学病院が充実しており、卒業後もそのまま大学病院で初期研修・後期研修を行う人が多く見られます。

もちろん国公立出身でも臨床一本の道(市中病院で専門医を取得し臨床医に専念)に進む人も多数います。ただ全体として見ると、国公立勢の方が「基礎医学研究」や「行政・政策医療(医系技官など)」といった多様な進路に進む割合がやや高いとの指摘があります 。学費負担が少ないぶん、卒業後すぐ高収入を得る必要に迫られず大学院進学など腰を据えてキャリア形成しやすいという環境要因も考えられます。

私立出身者が選びやすいキャリア

私立医学部は基本的に、臨床医の養成を目的として発展してきた背景があり、卒業生も臨床医として即戦力になることを重視する傾向が強いとされます。多くの私立医学部には大学附属病院がありますが、規模は国立大病院に比べ小さいところも多いため、卒業後は他大学の医局に入ったり市中の基幹病院に就職したりするケースが一般的です。例えば、慶應や日本医大など歴史ある私大は独自の医局ネットワークがありますが、その他多くの私大出身者は地元の大学医局に入局して専門医を取得することが多いです。結果的に、私立出身者は臨床研修後も地域の病院で勤務医として働き続け、開業医になるという流れが王道パターンと言えます。

また私立医学部には医師家庭の子弟が多いという指摘もあり、その場合は実家の病院や診療所を継ぐ(開業医になる)ことがキャリアゴールとして明確なこともあります。統計的には、日本の医師全体に占める開業医の割合は約20%強ですが、私立出身者の方が若いうちから家業を継いで開業するケースが目立つとも言われます(あくまで傾向であり例外も多々あります)。一方、研究医志向の学生は少なめで、私立から大学院に進んで基礎研究に打ち込む人は相対的に少数派とされています。これは良し悪しではなく、両者の校風や環境の違いによるものです。私立でも慶應義塾のように研究設備が充実し教授陣も一流の大学では研究者輩出もありますし、国公立でも臨床一筋の人は多数います。出身大学だけでキャリアが決まるわけではないものの、環境要因として多少の傾向は見られるという程度です。

奨学金返済や地域枠勤務の影響

卒業後のキャリアには、在学中に受けた奨学金の返済義務地域枠の勤務義務が影響を与えることがあります。例えばJASSO第二種奨学金などで大学6年間で数百万円の貸与を受けた場合、研修医になってから月数万円ずつコツコツ返済していく必要があります。勤務先選びにも高収入が得られる都市部志向になる場合があり、「奨学金返済が残っているから開業はもう少し先にしよう」など人生設計に関わるケースもあります。

特に地域枠奨学金を受けた人は、卒後に指定地域での勤務義務(例:9年間)が課されます。これはすなわち、その期間は自由に専門科や勤務地を選べない可能性を意味します。例えば「もっと高度な医療を学びたいから都市の大病院に移りたい」「結婚で別の地域に住みたい」と思っても、義務期間中は難しいかもしれません。実際、地域枠で入学したものの義務を完遂できず途中で違約金を払って離脱する若手医師も報じられています 。違約金は奨学金全額+ペナルティとして高額になるケースもあり、経済的・精神的な負担となります。

他にも、自治医科大学の卒業生は9年間のへき地医療従事が義務で、全うすれば貸与金(6年間で2,000万円超)が全額免除されますが、離脱すれば返済しなければなりません。防衛医科大学校出身者も医官として定められた年数(原則9年)自衛隊に勤務しない場合、学費相当額の返納義務があります。これら義務を履行することで得られる経験ややりがいもありますが、少なくとも義務期間中はキャリアの自由度が制限されることは確かです。

以上のように、卒業後の進路選択には出身大学による差異も多少ありますが、最終的には本人の志向次第です。国公立出身でも臨床一本で地域医療に貢献する人もいれば、私立出身でも研究で世界的成果を上げる人もいます。重要なのは在学中に多くの経験を積み、自分の進みたい道を見極めることです。その上で、奨学金など経済的要因も踏まえつつキャリアプランを描いていくと良いでしょう。

国公立医学部のメリット・デメリット


ここまでさまざまな観点から比較してきましたが、改めて国公立医学部に進学するメリット・デメリットを整理します。

メリット

学費が非常に安い:繰り返しになりますが、国公立医学部は6年間で約350〜400万円程度と、私立の数分の一で済みます。経済的負担が小さいため、奨学金の借入額も抑えられ卒後の返済プレッシャーも少なくて済みます。

偏差値上トップ層の同級生:難関を突破した優秀な学生が集まるため、刺激し合える環境です。将来医師仲間となる同級生の質が高く、人脈形成にも恵まれます。

大学病院など研究・教育資源の充実:多くの国公立医学部は附属病院の規模が大きく、最新の医療や高度な症例に学生時代から触れられます。また基礎医学の研究設備や教授陣も充実しており、希望すれば学生のうちから研究活動に参加する機会も得やすいです。

国費による社会的信用:国の税金で育成されることから、社会からの期待と信用が大きいとも言えます 。自治医大や防衛医大などを除けば、医学生に給付金はありませんが、学費が安いことで国民に支えられているという意識が芽生える利点もあります。

デメリット

受験科目・範囲の多さ:入試を突破するのが非常に大変です。共通テストで文系科目まで高得点が必要で、かつ二次試験の専門科目も高度な記述力が要求されます。つまり高校在学中にオールラウンドな学力を身につけないと合格自体が難しい点が最大のハードルです。

倍率の高さ・浪人の覚悟:1校しか本命を受けられない分、毎年多くの受験生が不合格となります。結果的に浪人(再受験)率が高く、1〜2浪は当たり前、3浪以上で合格する人も少なくありません。現役合格できなかった場合、長い試験生活を送るリスクがあります。

地方大学だと立地面の不便:国公立医学部の多くは地方都市に所在します。地元志向の人には問題ありませんが、都会育ちの人が地方大学に進むと生活環境のギャップを感じるかもしれません。とはいえ勉強漬けの日々になるので大きな問題ではないとの声もあります。

カリキュラムの厳しさ:学費が安い分、容赦ない進級判定や厳格な教育が行われる大学もあります。留年や国試浪人を出さないようスパルタ指導のところもあり、気を抜けません(もっとも最近は私立も進級厳しい大学が増えていますが)

このように、国公立医学部は「費用面の圧倒的メリット」と「入学ハードルの高さ」が両刃の剣です。合格さえしてしまえばメリットは計り知れませんが、その合格を得るまでの努力量・競争は凄まじいものがあります。そこをクリアできる見込みがあるなら国公立を目指す価値は大いにありますし、難しいと感じる場合は他の選択肢も検討すべきと言えるでしょう。

私立医学部のメリット・デメリット


続いて私立医学部進学のメリット・デメリットを整理します。国公立と表裏の関係にある点も多いですが、私立ならではの特徴を押さえましょう。

メリット

入試科目が絞られる:私立は英語・数学・理科2科目が中心で、国語や社会を勉強しなくて済みます 。理系科目に集中できるため、極端に苦手科目がある人でも戦略が立てやすいです。また複数回受験できる分、合格のチャンスが多いのも利点です。

最新設備・少人数教育:学費が高いぶん、シミュレーターや実習機材など最新の教育設備を整えている大学が多いです。学生数も1学年100〜120名程度と適度な規模で、教授や講師との距離が近く面倒見が良いところもあります。

出身地の制約がない:全国どこの私立医学部でも受験できるので、自分の好きな地域の大学を選べます。東京の私大であれば都会の生活環境の中で6年間を過ごせますし、地元近くの私大を受けることもできます。選択肢が広い点はメリットです。

合格までの総学習量がやや少ない傾向:国公立専願に比べれば、社会や国語に割く時間を理数に回せるため効率は良いです。極論すれば英数理に特化した勉強で突破できるので、勉強が遅れている人でも軌道修正しやすい場合があります。

デメリット

学費負担が重い:何と言ってもこれが最大のハードルです。6年間で平均3,200万円、安い大学でも1,800万円程度かかります。医学部卒業後は高収入を得やすいとはいえ、家庭の経済的負担は非常に大きく、奨学金や借金を抱えてスタートする人も少なくありません。

競争率の高さと問題の癖:私立医学部は志願者が多く倍率が高いです。一人で複数合格するケースも多いので実態はともかく、心理的圧迫感はあります。また問題が大学ごとに独特で、過去問演習なしでは太刀打ちできないこともあります。受験生は併願校全ての対策をする必要があり、国公立とはまた違った大変さがあります。

国家試験合格率に差:近年は改善していますが、一部私立医学部では医師国家試験の合格率が他大学より低めというデータがありました。補助的な講義や対策に大学間で差がある可能性があります。ただし現在はどの大学も国試対策に力を入れており、大きな心配は不要との見方もあります。

学閥や病院ネットワーク:国公立の医局に比べると、私立大学は歴史が浅いところもあり研修病院ネットワークが弱い場合があります。大学によっては関連病院が少なく、卒後の研修先探しに苦労する人もいるかもしれません。ただ有名私大(慶應・慈恵など)は強固なネットワークがあります。

総じて私立医学部進学は「お金がかかるが科目負担は軽い」のが特徴です。経済的ハードルさえクリアできれば、医学部への道は国公立より開けやすい面があります。極端に言えば、家庭の支援が十分ある人にとって私立医学部入学は現実的な選択肢となりえます。一方、学費の問題で進学を断念する人がいるのも事実で、国も私立の学費減免を推進しています。自分が私立向きかどうか、家族ともしっかり相談しながら判断しましょう。

学費以外にかかる費用と資金対策


医学部で必要となるお金は学費だけではありません。在学中には教材費、実習関係費、国家試験準備費、さらに一人暮らしをする場合は生活費もかかります。この章では、そうした学費以外の出費とその目安、そして資金対策について説明します。

教科書・実習・国家試験対策費

医学部の勉強では専門書や参考書を数多く購入します。医学書は1冊数千〜数万円と高価で、「解剖学アトラス」「○○学(各専門分野の教科書)」「病気がみえるシリーズ」「QB(国試問題集)」など必須書籍だけでもかなりの量になります。6年間トータルの教材費は平均10万〜20万円程度と言われます 。もちろん古本を先輩から譲ってもらうなど節約も可能ですが、最新版で揃えるとそれなりの金額です。

実習関連費としては、白衣聴診器ペンライトなどを自前で用意する必要があります。大学指定の白衣を買うこともあり、全部合わせて5万円前後を見ておくとよいでしょう 。また臨床実習が始まる前にはB型肝炎などの予防接種を受ける大学もあります 。ワクチン接種費用は数万円程度ですが、大学が負担するケースもあります。さらに実習で遠方の病院に行く際の交通費・宿泊費が発生することもあります(これも大学支給のところと自己負担のところがあります)。

医師国家試験対策費としては、受験前に予備校の国試対策コースに通う人もいます。大手予備校の直前講座や合宿講座などは数万円〜十数万円するものもあります。ただ最近はネットの問題集サービスや先輩からのお下がり資料で独学する人も増えており、人それぞれです。加えて医師国家試験の受験手数料(約60,000円)も卒業時に必要になります。こうした試験対策費は本人のやり方次第ですが、数万円程度の出費は見込んでおいた方が安心です。

一人暮らしに必要な生活費

親元を離れて医学部に通う場合、生活費も無視できません。一般的な大学生の一人暮らし費用は、月13万〜17万円ほどと言われています 。内訳は家賃が最も大きく、地方なら月5万円前後、都市部だと7〜8万円以上になることも。その他、食費・光熱水道代・通信費(スマホ代など)・雑費・交際費などで月数万円ずつ積み上がります。医学部は他学部より勉強が忙しくアルバイトに割ける時間も限られるため、生活費は主に仕送りや奨学金で賄う人が多いです。6年生になると実習で拘束時間が長くなり、バイトはほぼ出来なくなると考えておきましょう。

医学部によっては学生寮が用意されているところもあります。例えば自治医科大学は全寮制で寮費無料(ただし義務あり)、昭和医科大学などは1年次だけ寮に入る制度があります 。寮は費用が安く仲間もできやすい反面、プライバシーや門限など制約もあります。利用するかは好みですが、経済的には寮の方が断然お得です。

生活費を抑える工夫として、自治体からの家賃補助学生向け住宅補助がある場合もあります。大学生協が安価なアパートを斡旋してくれることもあります。さらには奨学金も生活費用途に充てられますので、必要なら遠慮なく申請しましょう。JASSOの第一種(無利子)・第二種(有利子)は代表的ですが、自治体独自の給付奨学金(例えば東京都「東京都医学部奨学金」など)もあります。私立医学部生向けには銀行の教育ローンも学費+生活費として借りられるものがあります。「お金がないから生活が苦しい」とならないよう、事前に活用できる制度を調べておくことが大事です。

目的別・タイプ別の大学選びガイド


医学部志望者と一口に言っても、その事情や目的は人それぞれです。ここではいくつかの典型的なケースを想定し、どんな大学を選ぶと良いかの指針を提示します。自分の志望動機や条件に照らして、大学選びの参考にしてください。

「とにかく医学部に入りたい」ケース

「多少の条件は問わないから、とにかく医師免許を取れる医学部に入りたい」という切実なケースです。この場合、合格可能性を最大化することが最優先になります。具体的には以下のような方法があります。

私立医学部を含む複数校併願:国公立一本ではなく、私立も視野に入れて受験校を増やしましょう。受験費用はかさみますが、その分どこかに引っかかる確率が上がります。過去には8校以上出願して1校合格という例も珍しくありません。

地方を検討:首都圏や人気大学にこだわらず、地方の医学部や比較的新しい医学部も射程に入れます。特に、東北地方・四国地方・九州地方は志望者が少なく偏差値が低めになりがちです。

再受験・多浪も辞さない:本当に医師になりたいなら、1回や2回の不合格で諦めない強い意志も必要と言えます。多浪というだけで不合格になる医学部はほぼありませんし、年齢で差別されることも基本ありません(ただし、そうなった背景については判断材料とされます)。実際30代や40代で入学する人もいます。

国外医学部も視野に:究極的には日本国内にこだわらず海外の医学部に進む道もあります。東欧やアジアの一部では日本人留学生を受け入れる英語医学課程があり、卒業後に日本の医師国家試験を受けられる国もあります。ただし、費用や言語の壁、入りやすさに対する進学や卒業の難しさの差も大きいため、慎重に検討しましょう。

このケースでは、「医師免許取得」というゴールから逆算して最も合格率の高い戦略を取ることが肝心です。偏差値に縛られず、学費や環境の制約もある程度妥協する姿勢が求められます。

学費を最小限に抑えたいケース

経済的事情から「できるだけお金をかけずに医学部を出たい」というケースです。この場合のポイントは国公立医学部 or 学費免除制度の活用です。

国公立医学部を第一志望に:学費負担を考えると、国公立以外の選択肢はほぼ無いでしょう。6年間で300〜400万円程度なら奨学金や教育ローンで賄えるレベルですが、私立に数千万円は厳しいはずです。したがって全力で国公立合格を目指します。どうしても私立なら、自治医科大学(授業料等全額免除+手当あり)や防衛医大(学費不要+給料支給)といった特殊大学も検討に値しますが、合格難易度が高いため、入れるかはまた別の話です。それ以外の私立なら、奨学金が充実したところ(例: 産業医科大の全額貸与・一部免除奨学金など)を調べましょう。

奨学金・地域枠のフル活用:国公立に入れても生活費等でお金はかかります。JASSOの第一種(無利子)奨学金は成績要件を満たせば借りられます。また自治体の修学資金貸与制度を調べてみましょう。例えば千葉県では千葉大学医学部や日本医大・順天堂・帝京大医学部の学生に年間240万円貸与し、卒後9年県内勤務で返還免除する制度があります 。こうした制度を利用すれば実質的な負担を大幅に減らせます 。自分の出身地や志望大学のある都道府県にどんな支援策があるか、早めに情報収集してください。

在学中の生活も節約:寮があるなら入る、なければ家賃の安い郊外に住む、バイトも時間の許す限り行うなど、学生生活でも節約に努めます。ただし勉強がおろそかになって留年すると本末転倒なので、そこはバランスが重要です。

卒業後に回収:最終的には医師となって働けば、相対的には高収入が得られるといってよいでしょう。多少の借金(奨学金)で卒業しても、勤務医として返済は可能です。医師は初期研修が終われば年収1,000万円に届くことも珍しくない職業なので、将来の投資と割り切ることもできるでしょう。

地域医療/研究医/開業医を目指すケース

将来の志望が明確な場合、それに適した大学選びをすると良いでしょう。

地域医療を志す人:将来、地元や特定の地域で医療に従事したいなら、地域枠入試自治医科大学を検討してもよいでしょう。自治医大は都道府県ごとに定員2名ほど、卒後9年へき地等で働く義務がありますが、まさに地域医療にコミットできます。奨学金免除も魅力です。国公立でも地域枠推薦で地元出身者を優遇する大学が多いので、自県の大学を狙う手もあります。その際、地元病院との連携カリキュラムがある大学だと在学中から地域医療の現場を学べます。また産業医科大学(北九州市)も地域・産業現場に根ざした医療教育で有名です。ただし、卒業後にそのような地域・病院で初期研修すればいいだけなので、地域医療を志すからといってこの大学がいい、というのは特にないとも言えます。

研究医を目指す人:医学の研究者になりたい場合、研究設備と指導体制が充実した大学を選ぶことが重要です。具体的には旧帝大(東大・京大・阪大etc)や東京科学大、その他難関国立大が有力です 。これらの大学では在学中に研究室配属ができたり、医学研究者養成コース(MD-PhDコース)が用意されていたりします。例えば東大医学部の「MD研究者育成プログラム」や筑波大の早期研究医養成などが挙げられます。また慶應義塾大学医学部も基礎研究に強く、大学院進学者が多いです。大学ランキングで研究力が高い大学は環境が整っています。ただし研究医になるには本人の強い意志が不可欠なので、どの大学でも自発的に動く必要はあります。また、そもそもこれらの大学は入学難易度が高いため、目指せる学力がある人が目指すという感じではあります。

将来開業医志向の人:親がクリニックをやっている、いずれ自分で開業したいという人は、正直大学の違いは大きくありません。どの医学部を出ても開業はできます。ただ将来地域で開業するなら、その地域の医療事情に詳しい大学に行くメリットはあります。地元の医師会とのパイプや、先輩開業医とのネットワークができるかもしれません。また経営ノウハウは大学では教わらないので、在学中にビジネスや経営学を学ぶ余裕を持つのも良いでしょう。もし親の後継ぎであれば、私立医学部でも学費を出してもらいやすいケースが多いですし、あまり国私どちらでも差し支えないでしょう。

いずれのタイプでも、自分の目的に照らし合わせて各大学の特色を調べることが大事です。大学HPの教育方針や卒業生進路、選択必修科目などを見れば傾向がつかめます。まずは合格する学力を身につけることが最優先ですが、無思考で有名大学や偏差値の高い大学を目指すのではなく、「○○になりたいからこの大学」という視点で志望校を選ぶと、モチベーションも高まりますし、入学後も目的意識を持って過ごせるでしょう。

受験対策ロードマップ|独学 vs 予備校の選び方


ここでは医学部合格に向けた勉強法や受験対策について、国立向けと私立向けの違い、そして独学か予備校かといった学習手段の選択について述べます。自分に合った勉強法を見極め、効率的に合格しましょう。

国公立対策(共通テスト+二次)

国公立医学部志望者は、まず共通テストで高得点が必要になります。共通テストの目標としては、最低でも8割近く(78%以上)を目指したいところです 。特に、英語・数学・理科では9割台を狙い、国語・社会・情報で多少失点しても合計点では8割を超える得点を確保するのが定石です。なぜなら、英語・数学・理科は二次試験でも必要になり、総合点に占める配点割合が8割以上を占めるからです。共通テストの対策は、「二次試験対策+共通テストの形式にアジャスト」と考えてください。より本質で難易度の高い二次試験に向けた対策をしつつ、7月頃から共通テスト模試を月1回ペースで受験していくだけで十分です。共通テスト模試や過去問を解いても学力自体はほぼ上がりません。あくまでも二次試験対策で養成した学力を、共通テストの形式で最大限出力するトレーニングをするだけなのです。

共通テスト後の二次試験については、各大学の出題傾向に合わせた対策が必要です。例えば、東京大学では英語の出題形式が決まっていて時間がタイトですし、京都大学の英語は和訳と英作文のみなど、大学ごとに色があります。過去問研究は必須で、少なくとも5年分はやりましょう。科目別には、英語は長文読解が配点の5~6割を占めるため、長文読解対策が学習のメインとなります。私立では一部しか出題されない英作文が、国公立では出題してくる大学の方が多いです。数学は医学部独自問題を出題する大学もあり難度は高めになる傾向ですが、基本は標準的な問題集を通して解法パターンを網羅することです。理科(物理・化学・生物)は、教科書の範囲を超える出題は基本なく、典型実験の考察問題などが多いので、教科書事項の徹底理解と問題演習で対応します。小論文・面接は医療倫理や時事問題に対して、フォーマットに沿って自分の考えを出力する練習をして乗り切りましょう。

まとめると、国公立医学部対策は、二次試験対策がメインとなり、共通テストは二次試験対策ができている人は結果的に取れるものとなります。記述模試の偏差値と共通テストの得点率には強い相関があり(=相関係数0.8程度)、二次試験の対策が共通テスト対策を内包していると言えます。とはいえ、共通テストは独特な出題形式になっているので、タイトな時間でスピーディーに解いたり、わからない問題があったときの対処など、形式への”慣れ”が必要になります。逆に言えばその程度なので、学習設計は「二次試験がメイン、共通テスト対策はサブ」と考えてよいです。

私立対策(3科目中心)

私立医学部(専願)志望者の勉強は、英語・数学・理科の3教科(+小論文・面接)に集中できます。国語や社会は不要なので、高2までにそれらは割り切ってしまいましょう(学校の成績は置いておくとして)。英語は国公立と同じく長文読解対策がメインとなりますが、少しだけ医学部特有の語彙(医療系単語)が必要になる大学があります。また、国公立医学部と比べて文法問題の出題が多いとも言えるでしょう。私立医学部は長文の難易度・量がともに多く、そもそも時間内にすべて解けないような設計になっているところもあります。よって、合格最低点を調べ、まずは何点取れればいいのか、それを取るためにどこを捨てるべきなのか、逆算して戦略的に解いていく必要があります。根本的には、語彙量、文法知識量、多読多聴量を確保するという王道の学習を進め、過去問演習を通して各大学の出題形式にアジャストし、合格最低点を再現性をもって超えられるようにします。数学は、私立医大は難問奇問が出題されることがあります。しかし、東京大学ですら学習指導要領の範囲内からしか出題されないため、教科書傍用問題集を徹底し、収録されているパターン問題の解法を習得することがすべてです。実際、私立医学部といえど典型問題が多い大学が多いですし、もし難問奇問が出されても周りも解けないので、捨てることこそが合理的な判断となります。難問奇問であると判断できない人、戦略的に捨てられない人を落とすための問題だと思ってください。理科(二科目)も、数学と同じく、教科書傍用問題集を徹底することに限ります。その中で解ける問題を確実に取り、そこから外れた問題を躊躇なく捨てることです。それでちょうど試験時間が終わるような大学も多いのです。苦手分野を作らないこともポイントです。例えば、化学の高分子化合物が他学部と比べて出題頻度が高い傾向がありますが、多くの人がこの分野から逃げています。網羅的に対策することが(これは私立・国公立関係なくですが)ポイントです。過去問は私立では大学別に傾向が大きく違うので、基本的には3年分やればいいのですが、再現性をもって合格最低点を超えられるまで追加しましょう。なお、大学ごとに生物有利・物理有利など差があるとまことしやかに言われることがありますが真偽は不明ですし、アンコントローラブルなので、気にしなくてよいです。

私立医学部は共通テスト対策をしなくてよい分、年内から各大学の過去問演習に時間を割けます。具体的には、10月中旬にある第3回全統記述模試までは偏差値を出すことに注力しながら、それ以降は、私立専願の場合は8校を上限として、1週間に2校の過去問をやる、とすると、復習時間も十分に確保した上で過去問演習機会を確保できるでしょう。過去問演習の際には、まず合格最低点を調べることを徹底してください。「できるだけ多くの点数を取ろう」とする姿勢では点数を大きく崩しがちです。「これだけは最低でも取る(確実に)」という姿勢で解くためにも、必ず合格最低点は調べましょう。その上で、各科目で何点ずつ取るかの点数配分を決め、その上で時間配分を決めます。満点を取る必要はありません。特に私立医学は難易度設計が国公立医学部よりも極端で、4割台〜5割前半でも合格する大学があるほどです。過去問演習とは、学力を上げるものではなく、出題形式にアジャストし、制限時間内に合格最低点を超える練習だという認識を持ちましょう。

最後に面接・小論文ですが、これは各大学でテーマが違います。医療問題の時事ネタ(地域医療、医師偏在、医療倫理など)について自分なりの意見をまとめ、練習しておきましょう。特にフォーマットをきちんと持っておくことが重要です。論理構造がめちゃくちゃであれば、どれだけ内容があったとしても点数はもらえません。面接は主に人柄を見るものなので、志望理由や将来像をしっかり語れれば大丈夫です。面接は試験ではなく、普通に会話をしてきて「会話のキャッチボールができるか見られている」と思ったらよいです。

独学・予備校・オンラインのメリット/デメリット

医学部受験の勉強手段として、独学(学校+自習)、予備校通学オンライン講座利用などがあります。どれが良いかは人によりますが、それぞれメリット・デメリットがあります。

独学:自分で計画を立て教材を選び勉強する方法です。メリットは費用がかからず自分のペースで進められること。苦手科目に時間を多く割くなど柔軟にできます。デメリットは情報不足と客観的視点の欠落です。医学部受験は特殊なため、独学だと何をどこまでやるか迷うこともあります。迷った結果、情報収集に時間をかけてしまったり、目の前の問題集に集中できなかったりして、集中して勉強する時間が大幅に減ってしまったりします。独学成功の鍵は、頼れる情報源を見つけることと、良質な市販教材を徹底すること模試をフル活用して自力で弱点分析・修正できる自己管理能力などが挙げられます。独学によって発生する無駄を許容しつつ、それを上回るメリットがあると考えた時は独学をするといいでしょう。

予備校:大手予備校や医学部専門予備校に通学する方法です。メリットは、受験情報や最大公約数の指導をしている点です。受験情報に関しては、最新の情報に加え、長年の指導経験を踏まえたアドバイスを受けることができます。最大公約数の指導とは、自分に合っているかわからないけれども、これに乗っかれたら合格する(であろう)というものを提供してもらえる安心感があるということです。また、独学と違い、生活リズムが整いやすく、家で勉強ができない人には毎日通う場所があるだけでも大きいでしょう。デメリットは費用が高額なことと、授業のペースが合わない可能性があることです。年間数百万円かかる医学部予備校もあり、経済的負担は大きいです。授業についていけなかったり逆に簡単すぎたりすると効率も悪くなります。おすすめとしては、演習時間が十分に確保でき、医学部に特化した指導をしてもらえ、ここにあったカリキュラムで指導してくれるような予備校だと考えます。

オンライン学習:昨今は映像授業やオンライン個別指導などの選択肢も豊富ですが、そもそも映像授業を聴いて成績が上がるなら誰も苦労はしません。もし学校の授業を真面目に受講していなかったり、授業が壊滅的にわかりづらかった場合はピンポイントで単科で受講したらよいですが、そうでなければ受講したところで成績は上がりません。費用は通学予備校より抑えめである点が唯一のメリットですが、それは通学型の予備校で提供されるものが提供されないため当然です。

まとめると、現役生なら学校+独学で頑張りつつ、必要に応じて伴走型の塾を利用する形を取るのがよいでしょう。浪人生なら独学より、医学部受験に詳しいプロに伴走してもらいながら徹底して演習していくというのが効率的でしょう。自分の性格(自律型か指導型か)、経済状況、周囲の学習環境を考慮して、最適な方法を選ぶとよいです。いずれの方法でも大事なのは「合格最低点を取るには何をするか」を常に意識した勉強です。無駄なことに時間をかけず、合格に必要十分な学力を効率よくつけましょう。

よくある質問(FAQ)— 学費・奨学金・キャリア Q&A


最後によく寄せられる質問とその回答をまとめます。

医学部の学費って本当に私立だと数千万円もするんですか?
はい、私立医学部では6年間で平均約3,200万円ほどかかります 。高い大学では4,500万円を超えるところもあります 。一方、国公立医学部なら6年間で350〜400万円程度です 。学費の差は約10倍にもなります。ただし私立でも奨学金や特待生制度で学費全額免除となるケースがあります。また自治医科大学や防衛医大は学費がかからない特殊な例です。
奨学金で医学部の学費をまかなうことはできますか?
可能です。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は医学部生にも貸与(無利子・有利子)されますし、自治体の修学資金制度では授業料や生活費を貸与・給付してくれるものもあります 。例えば地域枠で自治体から年間200万円以上支給される奨学金もあります 。ただし返還免除条件(卒後○年勤務など)が付くことが多いので、その点は注意してください。国公立の場合、一部大学で授業料減免制度もあります。経済的理由での退学者が出ないよう制度は整いつつあるので、大学や自治体に問い合わせてみましょう。
私立医学部だと将来のキャリアで不利になりますか?
医師国家試験に合格しさえすれば、国公立・私立の出身による資格の違いは一切ありません。医師として働く上で給料や役職が学閥で決まる時代でもなくなっています。かつては国立大出身者が大学病院で教授になりやすいなどの傾向はありましたが、近年は実力主義が浸透しています。強いて言えば、一部の難関国立出身者は研究医や官僚になる人が多いなど進路傾向の違いはあります。しかし私立出身でも優秀な医師・研究者は多数いますので、出身大学よりも本人の努力次第です。患者さんから見れば医師は皆「○○大学医学部卒」ではなく「国家資格を持つ医師」です。
医学部では何年生で国家試験を受けるのですか?
医学部は6年制で、6年生の2〜3月頃に医師国家試験を受験します。4年次にCBT(Computer-Based Test)とOSCEという試験があり、それに合格して5〜6年次に臨床実習(ポリクリ)を行い、卒業見込みとなって国試受験となります 。なお医師国家試験の合格率は毎年90%前後で推移しています。しっかり勉強すればほとんどの人が合格できますが、万一不合格だと卒業はできても医籍登録ができず、翌年再受験となります。
地域枠で入学したら本当に9年も地方に縛られるのですか?
地域枠の義務年限は自治体や大学によって6年から12年まで様々ですが、一般的に9年前後が多いです 。その間は指定された県内の病院で勤務することが義務付けられます。ただし研修医の間(1〜2年)は他県の基幹病院で研修可能な場合もありますし、後期研修以降も指定範囲内であれば病院の異動はできます。義務期間中に結婚や家族の事情で勤務続行が難しくなった場合、相談次第では猶予や免除が認められるケースもあるようです。基本的には契約通り勤務する前提で入学すべきですが、絶対に抜けられない鎖に繋がれるというより、「地元に貢献する代わりに学費援助を受けた」という使命感で臨むと良いでしょう。
予備校には行った方がいいですか?
人によります。自分一人で計画立てて勉強を管理できるなら独学でも可能です。ただ医学部受験は特殊な戦略が必要なので、多くの人は利用しています。浪人する場合は、生活リズムとメンタル維持のために予備校の利用をおすすめします。医学部専門予備校は高額で、大手予備校の医学部コースはサポートが手薄です。このような実態を踏まえて最終判断すべきですが、プロに指示を仰いだ方が、成果につながらない無駄な努力を避けられるとは思います。

まとめ|あなたに向いているのは国立?私立?判断チェックリスト


長文お疲れ様でした。ここまで国立医学部と私立医学部の違いをあらゆる角度から見てきました。最後に、国立向きか私立向きかを判断するための簡単なチェックリストを提示します。当てはまる項目が多い方を目安に、進路選択の参考にしてください。

国公立医学部が向いている人

・学費をできるだけ抑えたい、奨学金も最小限にしたい。
・6教科8科目がまんべんなく得意で、共通テストも8割以上が取れそうだ。
・地方で6年間過ごすことも厭わない。地域医療に関心がある。

私立医学部が向いている人

・家庭の経済的支援を十分受けられる(または学費免除などの目途がある)
・英語・数学・理科に絞って勉強する方が効率が良い(国語や社会は苦手)
・都内の実家から通える医学部を志望するが、東大や科学大に行ける学力はない。

もちろん上記は極端に振り分けたものです。多くの人は両方の中間に位置するでしょう。その場合、第一志望は国立、併願で私立という形で挑むのが一般的です。大切なのは、「自分はなぜ医者になりたいのか」「どんな学生生活を送りたいのか」という原点に立ち返って考えることです。学費・難易度・環境など様々な要因がありますが、最終的に医師になるゴールは同じです。自分に合った道を選び、後悔のない受験生活を送ってください。この記事が進路選択の一助となれば幸いです。健闘を祈ります!