
小論文は、「どう書けばいいのかわからない」と悩む人が多い科目です。自由に書くことができるため、かえって難しく感じてしまうこともあるでしょう。
しかし実際には、医学部の小論文には必ず守るべき基本ルールや考え方があり、それさえ押さえていれば問題ありません。必要以上に構える必要はなく、「減点されない文章」が書ければ十分です。
この記事では、小論文を書くうえで知っておくべきルールや手順を、すべて明確に整理しました。読むだけで、書き方の迷いがなくなり、すぐに実践に移せる構成になっています。
限られた時間の中で、効率よく対策したい受験生のための実践的なガイドとして、ぜひ参考にしてください。
はじめに:医学部小論文対策の「前提知識」
◆医学部では小論文が評価の中心になることは稀
医学部では、多くの大学で小論文が課され、点数化されることもあります。しかし実際には、小論文が合否を分ける中心的な要素になることはほとんどありません。つまり、小論文で高得点を狙って合格を目指す必要はなく、むしろ「明らかな減点要素」がない文章さえ書けば十分です。背伸びをせず、最低限の対策に絞って取り組むのが最善です。
◆医学部小論文の合格の基準
「小論文」の合格基準は、わかりやすい文章を書けているかです。自分の意見について、なぜそう思うのかという理由の部分が、誰でも理解できる納得感の高い文章になっていることが大切です。突拍子のない角度からの優れた意見や難しい専門知識を書く必要はありません。
◆本記事の構成
この資料は、①意見論述の書き方、②要約の書き方、③書く際の留意点、④書く時のコツ、⑤頻出テーマ⑥よくある質問の6つのパートから構成されています。
①〜③には、すべての受験生に共通して守ってほしい基本的なルールや書き方が記載されています。みなさん目を通したうえで、なるべくこの型に従って答案を構成することをおすすめします。
②についてですが、まず医学部の小論文では、いくつかの大学で課題文の要約が出題されます。要約をしたうえで意見論述を求められるケースがメジャーです。そのため、受験予定の大学で要約の出題実績がある場合には、対策をしておきましょう。
出題されない大学であっても、余力がある場合は念のため見ておくことをおすすめします。というのも、小論文は出題傾向の変化が比較的激しく、これまで要約が出ていなかった大学で突然出題されることも考えられます。基本的なやり方だけでも確認しておくと、安心材料になります。ただし、5教科7科目の勉強が優先なので、どうしても余裕がないという場合は、省略するのも一つの判断です。
④以降は実際に書く上で役立つ内容を書いています。必ず守るべきルールというよりは、参考になるところだけピンポイントで採用していただければ良いという趣旨のものになります。
①医学部小論文「意見論述の書き方」
◆医学部小論文の意見論述には2パターンある
医学部の小論文には大きく分けて2パターンあります。
1つ目は、問題文で何を述べてほしいかはっきり示されるパターンです。例えば「高齢化社会で医師に求められる能力とは何か述べよ」「課題文を読んだ上で筆者の〜という考えについてあなたの意見を述べよ」「資料の写真を見て、この写真の男の子が考えていることを想像して述べよ」のようなものです。問題文を見て、何を書けば良いか理解できればこのパターンです。
2つ目は、何を述べるのかはっきりと示されないパターンです。「リーダーシップについて述べよ」「課題文について自由に述べよ」などです。リーダーシップについて述べろと言われても、リーダーシップの重要性、リーダーシップがある人の条件など幅広く、論点が定まっていません。これが2つ目のパターンです。
それぞれ書き方を解説していきます。
◆パターン1「何を書くかはっきり示されるパターン」
具体的な書き方を、以下の例題を用いて説明します。【構想メモ】は分かりやすいように載せていますが、実際に解く時は書かなくても構いません。頭の中で構想を練ることができるのであればそれで大丈夫です。
【問題文】
これから高齢化社会が急速に進展していくことになるが、その中で医療現場において生じるリスクとして何が考えられるか論じなさい。
【構成メモ】
<質問内容>
・高齢化社会の進展で医療現場に生じるリスク
<結論>
・医療現場の需要増加による負担、 医療事故や判断ミスのリスク増加
<その理由、詳細>
・高齢化が進むことで、医療や介護を必要とする患者が増加している。これに伴い、医療現場は慢性的な人手不足や医療資源の不足に直面し、負担が大きくなっている。
・高齢者は複雑な病歴を持つケースが多く、診療やケアの内容が多岐にわたる。さらに認知症患者の増加などで意思疎通が難しい場合もあり、医療従事者が誤った判断を下すリスクが高まっている。
【解答例】
高齢化社会の進展により医療現場に生じるリスクとしてまず1つ挙げられるのは、医療現場の需要増加による負担だ。高齢化が進むことで、医療や介護を必要とする患者は増加の一途をたどっている。その結果、医療現場では人手不足や医療資源の不足が慢性化し、現場の負担は日々増している。医療従事者は限られた人員と時間の中で多くの患者に対応せざるを得ず、心身の疲労が蓄積しやすい。医療従事者の過重労働問題は、度々ニュースなどのメディアでも話題になるが、高齢化社会の進展によりその傾向はさらに強まると考える。
二つ目のリスクとして挙げられるのは、医療事故や判断ミスの増加だ。高齢者は複雑な病歴や複数の疾患を抱えることが多く、診療やケアの内容が多岐にわたる。さらに、認知症などによって意思疎通が困難な患者も多い。こうした状況では、医療従事者が正確な情報を得られず、誤った判断を下すリスクが高まる。高齢化社会の中で、医療現場は需要増加による負担と、医療事故のリスクという二つの課題に直面している。
以上より、高齢化社会の進展により医療現場に生じるリスクとして、需要増加による負担と医療事故や判断ミスが挙げられると考えた。
まず問いに対する結論を述べます。しかし、これだけではどういう理屈でその結論になったのか分からないので、次にその説明をする流れです。
解答例では最後にまとめとして再度結論を述べていますが、これは書いても書かなくても構いません。書くとより構造が綺麗で文字数も埋まりますが、時間がない場合や文字数が足りない場合は省略しても結構です。
この書き方は構造がシンプルで、最初に結論を述べるため、読み手に最も伝わりやすいです。さらに、あらかじめ問いに対する結論を固めるので、書いているうちに論点がずれてしまうリスクを抑えることができます。
したがって、特別に自分に合った他の書き方を持っていない限り、この構成を使い回すのが無難です。また、構成を毎回同じにしておくことで、構成に悩む時間を減らし、短時間で安定した文章を作りやすくなります。
また、上の解答例では結論と理由を2セットに分けていますが、まとめても構いません。以下のようになります。
【解答例2】
高齢化社会の進展により医療現場に生じるリスクとして、医療現場の需要増加による負担と医療事故や判断ミスの増加が挙げられる。
まずは医療現場の需要増加による負担についてだ。高齢化が進むことで、医療や介護を必要とする患者は増加の一途をたどっている。その結果、医療現場では人手不足や医療資源の不足が慢性化し、現場の負担は日々増している。医療従事者は限られた人員と時間の中で多くの患者に対応せざるを得ず、心身の疲労が蓄積しやすい。また、過重労働による医療の質の低下も懸念されている。次に医療事故や判断ミスの増加についてだ。高齢者は複雑な病歴や複数の疾患を抱えることが多く、診療やケアの内容が多岐にわたる。さらに、認知症などによって意思疎通が困難な患者も多い。こうした状況では、医療従事者が正確な情報を得られず、誤った判断を下すリスクが高まる。高齢化社会の中で、医療現場は需要増加による負担と、医療事故のリスクという二つの課題に直面している。
以上より、高齢化社会の進展により医療現場に生じるリスクとして、需要増加による負担と医療事故や判断ミスが挙げられると考えた。
肝心なのは、まず結論を述べて、次にそうなった理由を述べることです。その範囲内であれば自由に書いていただいて構いません。
また、この他に何か書きたいことがあればそちらも自由に書いていただいて構いません。例えば最後に今後の展望を述べたりしても大丈夫です。
ちなみに、念のために注意しておきますが、まずは、問題の指示にきちんと従うことが大切です。
例えば、課題文を読んで「この登場人物の母親が息子に宛てた手紙を想像して書きなさい」というような特殊な問題であれば、指示通りに手紙の形式で書く必要があります。今回のような書き方を無理に当てはめるのは適切ではありません。また、「課題文を要約した上で意見を述べなさい」という問題であれば、まずは指示に従って要約を書き、その後に上の書き方で意見を述べるべきです。
つまり、まずは問題の指示を正確に守り、その上で意見論述をする際には、この書き方を参考にして書くことになります。
◆パターン2「何を書くかはっきり示されないパターン」
このタイプの問題は、問いが広すぎて、最初に何をどう書けばよいかが分かりにくいのが特徴です。
たとえば「課題文について論じなさい」「リーダーシップについて述べなさい」「この絵を見て自由に意見を述べなさい(例:男の子がボールで遊んでいる絵)」などが該当します。
「リーダーシップについて論じなさい」と言われても、リーダーシップの重要性、ある人の条件、医療現場での必要性など、書けるテーマは幅広く、どこから書き始めればよいか迷いやすくなります。
こうしたときは、まず自分で論点を明確に1つに絞ることが重要です。いきなり「リーダーシップとは何か」と広く答えようとせず、「リーダーシップがある人の条件について述べよう」とテーマを絞れば書きやすくなります。「私は今回、リーダーシップがある人の条件について述べたいと思う。それは〜である」といった書き方になります。
課題文型の問題も同じです。「課題文について論じなさい」という問いに対しては、「筆者が述べていた〇〇という主張は、医療現場におけるチーム医療にも当てはまる」といったように、自分の論点を定めてから論じると、書きやすく、読みやすい文章になります。
絵についての問題でも同じです。たとえば「この時の男の子の気持ちについて述べよう」と論点を定めることで、自由な発想に振り回されず、具体的に考えを展開しやすくなります。
ただし、注意点として、まずは問題文の指示を正確に読むことが何よりも重要です。問題文の中で、何について論じるべきかが示されている場合は、勝手に自分でテーマを設定してはいけません。つまり、本来パターン1として書くべき問題に対して、パターン2のように勝手にテーマを絞って書いてしまうのは不適切です。
たとえば、「課題文を読んだ上で、筆者の〜という主張について是非を述べなさい」といったように、論じる対象が明確に指定されている場合は、その指示に必ず従ってください。
したがって、思考回路は次の順序です。
① まずは問題文の指示をしっかり読み取り、それに従う。
② それでも指示が広すぎて何を書けばよいか分からない場合には、その中で自分が論じる話題をピンポイントに絞る。
なお、近年の傾向では、ほとんどの大学で問題文の指示が明確であり、①の段階で書けます。つまりパターン1です。パターン2は最終手段的な位置付けであることに注意してください。
以下に例文を載せておきます。
【問題文】
次の文章について論じなさい。
「わたしは失敗したのではない。うまくいかない1万通りの方法を発見しただけだ。」
【構想メモ】
<質問内容>
・次の文章について述べよ
・話題が広いので、「この言葉の真意」という話題に絞る
<結論>
・それは、失敗してもいいということではなく、失敗を次に生かすということ
<その理由、詳細>
・失敗した時点ではその失敗は許容されない。それを次に生かして次回以降同じミスをしないことが大事
・特に人の命を預かる医者はそう
【解答例】
私は今回、この言葉の真意について述べたいと思う。すなわちそれは、失敗してもいいということではなく、失敗を次に活かせということだと考える。一見この言葉は、失敗することを許容しているように聞こえる。しかし、社会に出た時、そう簡単に失敗が許されるだろうか。特に、医師は人の命を預かる立場にいる。医療事故の発生件数は年間300から400件だが、これらを失敗はしょうがないとして片付けるのは、あまりに患者とその家族に申し訳ない。エジソンの言葉をよく読んでみると、「失敗」を「うまくいかない1万通りの方法」と変換していることがわかる。この変換こそが、失敗を次の成功のために活かすということであり、エジソンの言葉の真意だと捉えた。つまり、失敗した時点では、それは許容されるものではない。その失敗から何かを学び、次回以降同じようなミスをしないことで初めて、前回の失敗が許容されるのだろう。これは、「失敗してもいい」という解釈とは大きく異なるものであり、将来医師になり患者の命を預かる身としては、絶対に勘違いしてはいけない点だと考えた。
②医学部小論文「要約の書き方」
医学部の小論文では、課題文の要約を求められることもあります。そこでここでは、基本的な要約の手順を紹介します。
まず前提として、要約には人それぞれやりやすい方法があります。すでに自分のやり方がある場合は、それを使って構いません。まだ確立していない場合は、ここで紹介する方法を参考にしてください。また、参考になりそうな部分だけ取り入れる形でも大丈夫です。
では説明に入っていきます。
まず、要約の基本は「①核となる結論部分だけを抽出し、②それを論理的につなぐこと」です。課題文は一般に、段落やひとまとまりのブロックごとに「核となる結論」と、それを分かりやすく説明するための「具体例・説明(装飾)」で構成されています。要約では、この装飾部分をそぎ落とし、核のみを取り出して再構成することが求められます。
具体的な手順は次の2ステップです。
① 段落やひとかたまりごとに、「要は何を言いたいのか」という結論を端的に把握しながら、最後まで読み進める
課題文に、該当箇所がそのまま書かれているなら、その文に線を引くだけで十分です。明確に書かれていない場合は、自分の言葉でメモをとるなどしていきます。
② ①で抽出した主張を、論理関係に注意しながら整理してつなぐ
それぞれの抽出要素を繋いでいきます。順接、逆接、因果関係など、課題文における論理の流れを忠実に再現してください。
この段階では、①で拾ったものの中から、文章全体を踏まえたうえで「やっぱり不要だ」と感じた部分を思い切って削る判断も必要です。逆に、拾わなかったものでも、全体の流れの中で「やっぱりこれは必要だ」と思えば、後から補うのも問題ありません。
要は、①でボトムアップで情報を抽出していき、そのあと②では文章全体を踏まえた上でトップダウンで全体構成を整えるという二段構えのイメージです。最終的に、全体として無駄がなく、論理的な要約になるよう仕上げていきましょう。
以下に例を載せておきます。
【課題文(約1,000字)】
人は成長の過程で多くの「失敗」を経験する。だが現代社会では、効率や即時の成果が重視されるあまり、失敗はできるだけ避けるべきもの、恥ずかしいものと捉えられがちだ。学校教育では、テストで高得点を取ることや、与えられた課題を正確にこなすことが評価されやすく、失敗すること自体を肯定的に受け止める機会は少ない。また、社会に出てからも、仕事でのミスは責任問題に直結することが多く、失敗そのものが強いストレス源となる。
しかし、失敗を完全に避けることは不可能であり、それをどう受け止め、次にどう活かすかこそが、その人の成長や成熟に大きく関わってくる。むしろ失敗を通じて得られる経験や学びには、成功以上に価値があることも少なくない。
たとえば、子どもの頃の経験を思い出してみよう。自転車の練習中、何度も転んでは膝をすりむき、それでも立ち上がって再び挑戦した経験がある人は多いだろう。最初は怖くても、何度も繰り返すうちに身体のバランス感覚が養われ、「どうすれば転ばずに進めるか」といった工夫の力も身についていく。こうした経験は、単に自転車に乗れるようになるという結果だけでなく、失敗を恐れず挑戦する姿勢や、粘り強さといった人格的な成長にもつながっている。そう、誰でも子供の頃はうまくできなかったことを繰り返し挑戦することで、学びや成長が促されていたのである
そして大人になっても、その本質は変わらない。たとえば仕事で大きなプレゼンに失敗し、上司や取引先から厳しい指摘を受けたとする。その体験はつらいものかもしれないが、自分の準備不足や説明の甘さに気づいたことで、次回以降の改善につながる。あるいは、人間関係の中での失言がきっかけで相手を傷つけてしまった場合も、その反省から、他者への配慮や言葉の選び方についてより深く学ぶ機会となる。失敗は、成功に必要な準備であるという見方もある。むしろ、失敗を避け続けることのほうが、自分の成長の機会を奪ってしまうリスクになるのである。もちろん、失敗を繰り返せばよいというわけではない。失敗の中にある原因を冷静に見つめ、そこから何を学び取れるかが重要である。単なる「しかたなかった」で終わらせるのではなく、自分の行動を見直し、改善の方向性を考える必要がある。
失敗を受け入れ、それを前向きな学びへと変えていく姿勢。それこそが、個人の成長にとって欠かせない要素であり、変化の激しい現代社会においても、柔軟に生き抜くための力になる。私は、失敗そのものではなく、それにどう向き合うかこそが問われていると考えている。
【解答例(要約文)/200字以内】
現代社会では失敗は失敗は敬遠されがちだが、それを完全に避けるのは不可能であり、むしろそれをどう受け止めるかが変化の激しい現代社会では大切である。誰しも子供の頃は繰り返し失敗する中で学習成長していく。これは大人になっても同じである。むしろ失敗を避ける方が成長機会を奪うことになり危険である。ただし、失敗を単なる失敗で終わらせてはならず、そこから何を学び改善していくかが大切である。
【解説】
具体例や、同じことの繰り返し部分を切り捨て、「要は何を言いたいのか」という点のみ拾っています。最後の段落は一見重要そうなことを書いていますが、結局は前までで述べたことの繰り返しなので全て省いています。
③医学部小論文「書く際の注意点」
◆医学部入試では小論文のルールはあまり気にしなくて良い
小論文の細かいルールを気にしすぎる必要はありませんし、専門の勉強をする必要もありません。そもそも小論文には、統一的ルールが設けられていないことが多いです。ましてや、文学部の入試ではなく医学部の入試なので、厳密なルールに従うことは求められていませんし、他の受験生も詳しくは知りません。常識的な書き方をしていれば問題ありません。
◆医学部小論文の段落構成
文頭の1字下げくらいは行っておくと良いですが、それ以外の段落のルールも、必ずこうしなければならないというものはありません。段落をどこで変えれば良いか分からないと迷う場合は、段落を変えなくても大丈夫です。
ただ、基本的には話の切れ目で段落を変えるのが自然です。例えば、結論を述べた後に理由を示す段落で切り替えるとか、1つ目の主張と2つ目の主張で変えると良いでしょう。
唯一注意すべきなのは段落を増やしすぎないことです。段落を分けすぎると文字数が少なくなり、内容が薄くなってしまいます。小論文の文字数は600字〜800字程度が多いので、その文字数に対して段落は2つ、多くても3つを目安にすると良いです。
◆医学部小論文の文体は常体
「〜です」「〜ます」といった敬体ではなく「〜だ」「〜である」といった常体で書いてください。
これも、必ず常体で書かないといけないといった決まりはありませんし、敬体で書いたところで大幅に減点されることはないと思います。
しかし小論文は常体で書くのが多数派であり、また敬体と常体が混じってしまうとそれは減点対象になりますので、初めから常体で書くと決めておくのが無難です。
◆医学部小論文では1文を短く切る
1文が長いと、論理関係を追うのが大変で読みにくくなります。したがって、なるべく短く切ることを心がけてください。以下に参考を載せておきます。
【1文が長い文章】
医療現場では、少子高齢化による患者の急増や人手不足、医療資源の不足などが深刻な問題となっていて、さらに複雑な症例を抱える高齢患者への対応や、限られた医療資源の中での治療の優先順位の決定など、医療従事者には多くの負担がのしかかっているため、現場では疲弊感やストレスが蔓延し、医療事故のリスクも高まっている。
【1文が短い文章】
医療現場では、少子高齢化によって患者が急増している。人手不足や医療資源の不足も深刻な問題だ。さらに、高齢患者は複雑な症例を抱えることが多く、限られた医療資源の中で、治療の優先順位を決める必要もある。こうした状況により、医療従事者には大きな負担がのしかかっている。その結果、現場では疲弊感やストレスが蔓延し、医療事故のリスクが高まっている。
◆医学部小論文の文字数は9割以上が目安であり目標
上限の9割以上が目安であり目標です。
ただしあくまで目標なので9割に届かなかったからといって大幅に減点されるわけではありません。さすがに6割や7割では印象がよくないので多少の減点はあるでしょうが、それでもその時点で不合格になるといったことは考えにくいです。
9割以上を目標としつつも、仮に届かなくても落ち込みすぎないでください。
◆医学部小論文の意見は書きやすいものを書く
意見を書く時は、自分の本当の気持ちよりも、書く話題が浮かんでくる書きやすいものを選ぶと良いです。例えば「〜に対して賛成か、反対か」と聞かれた場合、本心は賛成でも、反対の理由の方が上手く書けそうであれば反対を選ぶと良いです。
◆医学部小論文では「真面目で堅実な内容」を
小論文で重要なのは、真面目で堅実な内容を書くことです。医師は人の命を預かる仕事であり、求められるのは確かな倫理観です。そのため、面接や小論文では、受験生がまともな価値観を持っているかを確認する意味も込められています。突飛なおもしろい意見や専門的な知識は不要で、常識的な考え方を誠実に表現できることが大切です。
④医学部小論文「書く時のコツ」
ここでは、多くの人が小論文で躓きやすいポイントを踏まえて、書くときのコツを紹介します。ただし、ここに書かれている内容は「絶対に守るべきルール」ではなく、あくまで参考として見てください。使えそうだと思う部分があれば取り入れれば良いですし、自分でしっかり書ける自信があるなら取り入れなくても構いません。
◆医学部小論文で文字数が埋まりそうにない時のコツ
文字数が足りないときは、主に2つの対策があります。
1つ目は、テンプレートを決めておくことです。つまり、毎回使う文章の型をある程度決めておくという方法です。
例えば、「結論→理由→再度結論」といった大まかな構成だけでなく、「私は〜について〜と考える。以下理由とともに詳しく論じる。1つ目の理由は〜。2つ目の理由は〜。以上で述べた理由より私は〜については〜だと考えた。」といったように、具体的な文言まであらかじめ決めておくのです。
そうすることで、その部分の文字数は本番で考えずとも埋まります。もし文字数に不安がある場合は、このテンプレート自体を冗長にならない範囲でやや長めに設定しておくと安心です。ただし、あまりに厳密に固めすぎると、出題の傾向が変わった場合に柔軟に対応しにくくなるので、臨機応変に調整してください。
2つ目は、書く内容を細分化することです。いきなり「800字を書け」と言われると難しく感じるかもしれませんが、「結論→理由→再度結論」の3つの要素を100字、600字、100字の文字数比で書くと考えると、埋めやすくなります。さらに、理由の部分を「1つ目の理由」「2つ目の理由」に分けて300字、300字で書こうと決めれば、さらに書きやすくなるはずです。
このように、一度に全部を書こうとするのではなく、最初に書く内容を小分けにして考えていくと、1つ1つの分量は少なくなり、自然に文字数を埋めることができます。
◆医学部小論文で時間が足りないときのコツ
先ほど述べたテンプレートを決めておく方法は、時間が足りない場合にもとても有効です。あらかじめテンプレートを固めておけば、本番で考えなければならない部分が減るので、スムーズに文章を書けるようになります。
もう1つ大切なのは、内容を面白くしようとこだわりすぎないことです。医学部の小論文では、内容の面白さはあまり重要視されません。真面目な内容をしっかり書けていれば、それで十分です。内容がありきたりでも構わないので、思いついたことをすぐに書くようにしましょう。
◆医学部小論文の模範解答の使い方。書き終わった後に見比べて間違い直しは必要?
基本的に、模範解答に合わせて間違い直しをする必要はありません。
小論文には、5教科7科目のように絶対的な正解が存在するわけではないので、模範解答に無理に合わせても意味がないからです。書き終わった後は、第3者に添削してもらい、指摘された部分だけ直せば十分です。
ただし、模範解答を軽く読んでおくのは良いことです。参考になる書き方や、題材にしやすい医療知識などをピンポイントで盗むのは効果的です。
また、問題文が難しくて何を書けばいいのか方向性がつかめなかったときに、模範解答で大まかな方向性を把握するのも有効です。模範解答を読む際には、「なぜ自分は題意をつかめなかったのか」を考え、足りない知識や思考回路を補うようにしましょう。
要するに、模範解答をガチガチに暗記したり、完全に書き直す必要はありませんが、軽く目を通して、ヒントとして活用するという使い方は有効です。
◆医学部小論文でよくある失敗パターン(こんな小論文はNG)
・論点ズレ
論点がズレてしまうケースはかなり多いです。そもそも聞かれていることに答えていない場合や、意見を述べたあとに「なぜそう思うのか」を説明していたはずが、全く異なる話題に話が流れてしまうなどです。防ぐコツは、まず問いに対する結論を述べて話の方向性を固めることです。また、書き出す前にある程度「何を書くのか」を決めておくことです。たとえば、結論は何か、それに対する理由はいくつで、それぞれどんな内容なのか、というように事前に構成を整理するのがおすすめです。
・段落を変えすぎる
段落を変えすぎるパターンもよくあります。600字制限なのに段落を4回、5回と変えてしまうケースなどです。段落を変えすぎると文字数が減り、全体として内容が薄くなってしまいます。また、文字数が埋まらないのを段落でごまかしている印象を与えるリスクもあります。
迷ったら文頭の1字下げだけにして段落は変えないのが無難です。どうしても変えるなら、600〜800字制限の場合は2つ、多くても3つまでにしておきましょう。
・話し言葉
話し言葉が混じってしまうことも多いです。たとえば、「〜とか」「〜っていうのは」などです。それぞれ「〜など」「〜というのは」などが正しいです。
・悩みすぎた挙句、時間オーバー
何を書くか悩みすぎた結果、途中までしか書けず時間オーバーになるケースも少なくありません。内容は真面目で堅実であれば、多少つまらなくても構いませんので、身構えなくて大丈夫です。
⑤医学部小論文「頻出テーマ」
◆医学部小論文の頻出テーマについて
小論文では、ある程度出題されやすいテーマがあります。以下に、その代表的なものと想定される問題例をまとめてあります。余裕があれば、これらについては事前に自分なりの答えを考えておくと、本番でも落ち着いて対応しやすくなります。
ただし、注意しておきたいのは、あくまで「出る可能性が高いテーマ」であって、これらですべての出題傾向を網羅できるわけではないということです。事前に準備していたテーマが出題されればラッキー、くらいの感覚で、基本はどんなテーマにも対応できるように「型」を身につけておくことが最優先です。
◆医療のあり方
高齢化社会と医療
「高齢化が進む中で、医療現場に求められる対応についてあなたの考えを述べなさい。」
地域医療・過疎地医療
「地域医療を支えるために、医師として果たすべき役割について述べなさい。」
チーム医療と多職種連携
「チーム医療の重要性と、医師としての関わり方について考えを述べなさい。」
医療倫理(インフォームド・コンセント、安楽死、公平性など)
「インフォームド・コンセントの意義と、それを実現するうえでの課題について論じなさい。」
医療事故とその対応
「医療事故が起きた際、医療者はどのように対応すべきか、あなたの考えを述べなさい。」
感染症・災害医療・緊急時対応
「パンデミックや災害時において、医師に求められる役割について論じなさい。」
AIやテクノロジーと医療の未来
「医療分野におけるAI導入の影響と、医師に求められる姿勢について述べなさい。」
◆医師像
理想の医師像
「あなたが考える『理想の医師』とはどのような人物か。理由とともに述べなさい。」
リーダーシップと協調性
「医療現場におけるリーダーシップとは何か。あなたの考えを述べなさい。」
患者や同業者とのコミュニケーション
「患者との信頼関係を築く上で、医師に求められる姿勢について論じなさい。」
失敗・挑戦からの学び
「失敗をどのように捉え、次に活かすべきか。あなたの考えを述べなさい。」
多様性への理解
「医療現場において、多様性や公平性を尊重するために大切なことを述べなさい。」
現代社会における責任感・当事者意識
「現代社会に生きる一人として、責任を持って行動するとはどういうことか、考えを述べなさい。」
⑥医学部小論文「よくある質問」
- 医学部小論文の事前準備として、過去問はどれくらい解くべきですか?
- 志望校の出題傾向に合わせて、形式が似ている大学を含めて3年分ほど解いておくと安心です。ここで紹介した書き方は自分で実践して初めて身につくので、ある程度過去問をとくことは大切です。また、テーマや文字数、要約の有無などを把握することで、本番での戸惑いを減らせます。
- 医学部小論文の対策はいつ頃から始めるのが理想ですか?
- 対策は秋〜冬の直前期からで基本的に間に合います。この記事に沿って書き方の型を身につければ、形式面は短期間で習得可能です。問題になるのは、書くべき内容が本番で思い浮かぶかどうかです。これに不安がある人は、もう少し早い時期から医療・社会系のニュースを見たときに「自分ならどう考えるか」を考える癖をつけておくと良いでしょう。
- 医学部小論文の対策におすすめの教材はありますか?
- 過去問のみです。この記事の書き方を理解したうえで、あとは過去問を解いて型を身につけていくのが最も手っ取り早いです。一般的な小論文対策本を使っても構いませんが、医学部の小論文ではそこまで高度な論理構成や専門性は求められません。むしろ、その時間を5教科7科目に回す方が合格可能性は高まります。医学部の小論文で最低限守るべきルールはこの記事で網羅されています。
- 他の医学部受験生と差がつくような書き方の工夫はありますか?
- ありません。医学部において小論文が配点の中心になることはないため、小論文で差をつけたとしても全体の合格可能性が大きく上がるわけではありません。むしろ差をつけようとすることで、奇抜な内容に走ってしまうリスクがあります。ここで紹介した最低限のルールを守り、減点されない安牌な文章を書くことが最適解です。
- 医学部小論文の添削を受けるとき、どんな点を意識して見てもらうと良いですか?
- 論点がズレていないか(問いに対してきちんと答えているか)、文章が論理的につながっていて読みやすいか、形式面の3点を主にチェックしてもらいましょう。特に論点ズレは致命的なので重点的に確認してください。