医学部受験生の社会選択の考え方
社会は、国公立医学部受験生が共通テストでしか必要ないので、それをターゲットに話します。
まず、社会は1科目のみ必要で、世界史B・日本史B・地理B・倫政の4科目から選べばどの大学にも出願できます。次に、現代社会・倫理・政経で受験できる大学も存在します。世界史A・日本史A・地理AといったA科目で受験できる大学もあります。
負担で言うと、世界史B・日本史B・地理B・倫政>現代社会・倫理・政経>世界史A・日本史A・地理A という関係があり、選択できる大学も同じ序列になっています。
どのような社会選択が可能かについては、以下の記事に詳しく記載しています。
多くの高校で、高1は世界史A・現代社会を学ぶ
すべての生徒の高校カリキュラムを把握しているのですが、多くの高校が高1で世界史A・現代社会を勉強します。ということは、世界史や現代社会を選択すれば高2,3で演習に充てられそうと考えるのが合理的です。しかし、これらの科目がそもそも微妙です。
まず、世界史は世界史Bまで勉強しないといけません。そして世界史Bは、暗記量が多く対策しやすい教材もあまりないため、おすすめしません。
現代社会は、対策しなくても一般常識で8割以上取った人もいる一方、時事問題が多く出題され対策しづらいという特徴もあります。もし社会対策が間に合わなかった人がいたら現代社会選択でもいいと思いますが、そうでないなら積極的におすすめするわけではありません。出願できる大学も限られてしまいます。
市販教材も加味し、日本史B≧倫政>地理B>世界史Bの順でおすすめ
まずは出願可能な大学の選択肢を狭めたくないという人向けに、世界史B・日本史B・地理B・倫政の4つからおすすめ科目を示します。
結論から言うと、日本史Bがもっともおすすめです。暗記量はそこまで多くないことに加え、対策用の市販教材が優れているからです。
医学部受験生に一番おすすめは日本史B
『共通テストはこれだけ!金谷俊一郎の日本史B』と『共通テストへの道』があれば、理系生でも普通に勉強し、9割前後が取得可能です。
【決定版】『共通テストはこれだけ! 日本史B』の使い方とレベル
【決定版】『大学入学共通テストへの道 日本史』の使い方とレベル
医学部受験生へのおすすめは、次点で倫政
ほぼ同じくらいおすすめなのが倫政です。倫政は倫理と政経が合わさった問題で、倫理と政経を2つ勉強しないといけないため暗記量は日本史と同じくらいだと考えましょうあ。倫理と政経をそれぞれで受験するより、それぞれから比較的簡単な問題が選ばれているので、1+1=1.5くらいのイメージです。
日本史と比べて下げたのは、倫政を習いきるのが遅い高校があったり(高3になってから倫政の授業を開始する高校が多い)、倫理か政経しか学校で受講できない高校があったりするからです。
もし日本史に興味が持てなかったり、歴史より公民のほうが合っている、ということであれば倫政にしましょう。
医学部受験生にとって、地理Bは少し勉強しづらい側面も
「理系なら、暗記量が少なく、論理的思考があると有利な地理Bがおすすめ」という話をよく聞きますが、暗記量が少ないことを裏返すと対策がしづらく、沼のように時間が取られるのも地理Bの特徴です。また、論理的思考は文系でも必要になってくるので、決して理系だからといって有利になるわけではありません。
とにかく「対策しづらかった」と振り返る医学部受験生が多いです。特に国公立医学部の場合、地理Bは8割ほど安定して取得したいところですが、なかなかアンコントローラブルだったという意見が多いです。
比較的少ない勉強時間で7割ほど取得するには地理Bが合っているので、それでもいいという人は地理Bでも全然大丈夫です!
暗記量が多く良い市販教材のない世界史B
最後に世界史Bです。世界史Bは暗記量が他科目より比較的多く、なかなか共通テスト向けのいい教材がありません。そのためもっともおすすめ度が低くなっています。しかし、人によっては世界史が好きだったり、学校の先生の授業がわかりやすかったり、独自のプリントをやれば8〜9割を取るのが簡単な高校もあります。そういうときは世界史Bを選択しても全然問題ありません。
好きこそものの上手なれ×当日の難易度のゆらぎ=科目選択の有利不利は誤差の範囲内
上記のような情報を踏まえ、最終的には好きな科目を選ぶ、というのがいいでしょう。好きこそものの上手なれ、と言いますし、当日とある科目の難易度だけ上がることもあります。これを考えると、結局、科目選択の有利不利というのは誤差の範囲内に収まるという認識です。
好きでもないのに日本史Bを選んだ結果、勉強も辛いし当日難化して点数が取れなかった、というのは十分ありえる未来です。どんな未来が来ても納得できるよう、科目選択はしましょう。
医学部受験生の公民は、倫理>政経>現社の順でおすすめ
この3つからどれを選択しても、使うのは『蔭山の共通テスト』シリーズと『共通テストへの道』シリーズがおすすめです。前者は市販されている参考書の中でもっともわかりやすく、後者は東大生御用達の問題集です。
この順になっているのはなぜかというと、時事性の高いのが、現代社会>政経>倫理だからです。
倫理は過去問が充実している
現代社会、倫理、政経から選択する場合は、倫理がもっともおすすめです。先述の通り時事性がもっとも低く、昔の過去問を解いても対策になるからです。人物と紐づけて学べたり、流れもあったりするので、もっとも勉強しやすいでしょう。
政経は時事問題が多少入ってくる
政経に関しては、法律や仕組みが数年単位で変わるため、あまり過去問を活用できません。また参考書も最新の情報に対応していないなど、教材的にも使いにくくなっています。多少なりとも時事問題が出題されるため、どこまで勉強したらいいかの境界が曖昧になりがちです。新聞を毎日読んだほうがいい、といって効率度外視のアドバイスを見ることがありますが、社会1科目だけにそんな時間を使っている暇はありません。よって、勉強のしづらさという点で政経は次点となります。暗記量自体は倫理と同じくらいです。
現代社会は対策しづらい
もっとも対策しづらいのが現代社会です。一番世の中に出て役立つのは現代社会だと思いますが、ペーパーテストとの相性が悪い、というのが正直なところです。現代社会の参考書と過去問を使って勉強していくことになりますが、過去問は10年以内が限度でしょう。
一方、現代社会は一般常識でもある程度太刀打ちできるという性質もあるので、まったく社会が間に合わない人で、6割くらい取れれば他科目でカバーできそうという場合、最後の選択肢として現代社会を選ぶのも手です。
社会A科目でもいい医学部が一部にある
社会A科目というのは、世界史A、日本史A、地理Aのことで、B科目と比べて負担が半分以下の科目です。以下のような大学がA科目で受験できます。
受験可能な大学が非常に限られるため、これらの大学に必ず行きたいと考えている人以外にはおすすめしません。
まとめ|各科目の性質・市販教材・医学部受験の理解・自分との相性
まとめると、各科目の性質をまずは理解しましょう。暗記重視の科目ほど、覚えるものは決まっていますが対策は大変で、思考重視の科目ほど、覚えるものは少ないかもしれませんが対策がしづらく、結局は結構な時間を使ってしまいがちです。
医学部受験生の科目選択については、この科目の性質を紹介するにとどまってはいけません。ここに加えて、対策しやすい市販教材が存在しているかどうかも関わってきます。
ローカルな点で言えば、学校の先生の授業がわかりやすいかなども判断基準に入ってきます。進学校には名物先生のような人がいて、その先生の授業はすごくわかりやすく、授業とプリントだけで共通テスト8割はすぐ取れる、ということもあります。
あとは医学部受験という物自体への理解も深めましょう。共通テストで8割以上は死守しないといけない中で、社会以外の科目で何点取れそうか、それを踏まえて社会は何割取るか、その点数を最短で取れる科目は何か、というように考えていきます。
最後に、自分との相性です。嫌いな科目をただ有利そうだからという思考で選択しても、後悔する可能性が残ります。総合的に論理的に考え、「自分はこういう理由で◯◯を選んだ」と言える状態にしましょう。そうすれば絶対に後悔はしませんので。